るなside
窓の外を眺めながら、そう呟く。
数日前、急に騎士団が姿を消した。
そして次は、じゃぱぱさん。
ゆあんくんとえとちゃんまでいない。
誰もいない部屋、でもるなにはいつも話し相手がいる。
いつも窓に遊びに来てくれる、小鳥ちゃん達。
それから部屋の中で眠る猫ちゃんも、友達が飼っているハムスターも、森で暮らす凶悪な動物だって、みんなるなのお友達。
あ、別に友達がいないから動物を友達って呼んでるとか、そういうわけじゃなくて。
_______そう、特殊能力。
まだ誰にも話したことはないけど、るなは生まれた時から動物と会話することができる。
そしてるなは、"謎の動物使い"として、たまーに騎士団のお手伝いをしてみたり...?
まだたっつんさんにも、じゃぱぱさんにもバレていない。
だって、るなのこの力が特殊能力だって王宮で働くまで知らなかったし...
今まで誰も信じてくれなかったから...!
だけど実は、1人だけ、るなの能力について知っている人がいる。
あれはたしか......るながこの城に来て、すぐの頃だったはず。
数年前_______
るなが働き始めてから、毎日のようにるなの元へやってくる猫がいた。
綺麗な真っ黒な毛並みで、飼い主はいないようだったが、誰かが世話をしていることは一目で分かった。
でも誰に世話をしてもらっているのか聞いても、いつも何故か教えてくれなかった。
...というか、この子は最低限の事以外あまり話さない無口な子だった。
こんなに丁寧に世話してるってことは、なおきりさんとか?あ、たしかシヴァさん小鳥好きだったし、動物好きそう。
獣人だし、どぬくさんかも。
るなの知り合いで思い当たる人は、そのくらい。
そして数日後、ずっーとお願いし続けていたら、黒猫ちゃんはその人のもとまで案内してくれると言ってくれた。
もしかしたらるなと同じで、動物と話せる人なんじゃないかという淡い期待を抱いて、るなは猫ちゃんに着いていく。
しばらく歩くと、そんな声が聞こえてきた。
どこがで聞き覚えがある...ような、でも誰かは分からない。
ていうかこんなとこ初めて来たかも...
そんな事を考えながら、曲がり角を曲がる。
首元まで伸びた襟足と、少し小柄な体型。
すごーーーく見覚えのある、だけど滅多にお目にかかれない、そんな人物がそこにはいた。
5匹の猫に囲まれ、餌をやり、毛繕いを手伝っている。
るなを案内してくれた猫ちゃんは、うり王子の姿を見ると吸い込まれるようにその膝の上へと駆け抜けた。
一方うり王子は、とにかく驚いたと言わんばかりの表情で、るなのことを見つめる。
噂通りの美形。でもその視線はどこか冷たくて、曇っている。
人と関わらない人、と聞いた。
やば、これもしかして怒られ__________
そう言いながら、この城が認めた薬剤師である事を証明するネックレスを見せる。
うり王子はるなを突き放すように、そう言う。
いや、猫を追いかけてたらここに着きましただなんて、そんなロマンチックなこと言えない...。
するとうり王子の膝に座る黒猫ちゃんがニャー、と短く鳴いた。
「王子は音楽が好きだよ」と、教えてくれた。
何言ってるんだ、と自分でも思う。
ちょ、猫ちゃん、もっとなんかアドバイス頂戴...!!
そう目で訴えかけると、違う猫ちゃんが「そんなに怖がらなくても大丈夫」、とるなに言った。
そっか、そうだよね。
見ているだけでも、この猫ちゃん達がうり王子のことを大好きなのがわかる。
綺麗な毛並みも、安心して眠る様子も、全てうり王子が毎日世話をしているからだろう。
そう言うと、猫ちゃん達がゆっくりとるなに近づいてきた。
そうるなが問いかけると、何故かうり王子は少し不思議そうな顔をする。
そして急に黙り込んでしまった。
あ、あれ...なんかまずいこと聞いちゃったかな...?
すると少し間を置いて突然、うり王子が口を開く。
え、相手からそんなこと言われるのは初めてだ。
誰も、信じてくれないのに。
るなは嬉しくなって、少しハイテンションで返事をする。
真顔のまま、うり王子はきっぱり否定する。
え、あ、話せないの?
てっきり同じなのかと思って調子に乗っちゃった...
いや、この人の観察力やばすぎるでしょ...
ていうかだからって、猫と会話してるとはならないでしょ!
これが、るなが初めて自分の特殊能力に気づいた時の話。
うり王子とあの時会っていなかったら、るなは一生自分の能力に気付くことがなかっただろう。
唯一うり王子だけ、るなが特殊能力を使えることを知っている。
まぁだからと言って、あれからうり王子と話すことも会うことも無かったし、もうるなのことすら忘れられているかもしれないけど。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。