たっつんside
2人で話したい、そううりから言われ、ヒロくんはなおきりさんの手当て、俺はうりと交渉をすることになった。
個室に入り、俺らは腰をかける。
うりは少し考えて、少し言いにくそうに下を向きながら話す。
...どちらかを選べってか。
なおきりさんか、うりか。
______交渉が上手いな。
俺はまず、そう思った。
うりは自己肯定感が高いわけでは無いけど、取捨選択は間違えないほどには自分や周囲を客観視できる。
...そう、つまり、うりは俺がその2択で悩んだ時どちらを選ぶのかは分かっているということ。
うりは判断力、戦闘力において、今回のメンバーの中でもかなり優れている。
なおきりさんは協調性、チームのバランスを保つために居てほしい存在。
だけどどちらかを選べ、そう言われた時にどうしても優劣はつけなければいけない。
そしてうりは、実力においても、作戦の鍵としても、なおきりさんよりずっと大事な駒となる。
...最終目標のためにも、ここでうりを離脱させるわけにはいかない。
それになおきりさんの怪我がどれくらいで完治するのか______。
うりは意地悪そうに、だけどちょっと苦しそうに笑って言った。
きっと、これがうりの中で出した精一杯の答えなのだろう。
本望ではない。だからこんなに、苦しそうに笑う。
ヒロside
俺はなおきりさんの服を捲り、怪我の手当てをする。
背中に大きく切り傷ができていて、身体の至る所に痣ができていた。
消毒して、包帯を巻いて、傷口を閉じる。
なおきりさんはうりと別れた瞬間にスイッチが切れたのか、今は眠りについている。
服を正し、布団を被せ、俺は椅子に座る。
ガチャッ
うりがなおきりさんを殺さないことは知っていた。
そしてうりは、"まだ"なおきりさんを完全に見捨てたわけじゃない。
だからこうして傷の場所まで計算して、今後支障が出ないようにしている。
うりの交渉の内容は大体予想はついていた。
...ちなみにひとつ言っておくと、俺は今うりが何を考えているのか理解できているわけじゃない。
なおきりさんとうりが和解できると勘違いしてしまったのが、俺の理解不足の証明だ。
なおきりさんが不要だから離脱させるわけじゃない、とたっつんさんは言いたいのだろう。
本当にその通りだ。
うりも、なおきりさんも、そして他のみんなも、みんな大切な仲間だ。
ただうりは少し事情が違うだけ。
あいつなりに考えた結果がこれなんやろうな、とたっつんさんは少し悲しそうに呟いた。
おやすみ、そう言ってたっつんさんは部屋から出て行った。
あとひとつのピースが揃えば全てが見えそうなのに、そのピースが見つからず結局まだ何も分からない。
部屋の電気を消し、俺は床に布団を敷いて横になる。
そしてまた、少し考える。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。