うりside
...ったく、本当に最悪の気分だ。
なんでこうなるのか。
どんな条件を呑んだとしても、奴の思うツボってわけか。
俺は手につけられたリストバンドを見つめる。
盗聴器とGPSだなんて、ほんといい趣味してるよな。
裏切りは許さないってことか。
善とか、悪とか、そんなことはどうでもいい。
誰が何を言おうと俺からすればこいつは偽物で、いつも一緒にいたなおきりさんが本物だ。
そう言われ、俺はきょとんとする。
くっそ意味わかんねぇ。
てか本当にそうだとしたら、飛んだヤバいやつだなコイツ。
俺がそう問いかけると、奴は驚いた顔をして俺の顔を見つめる。
俺とコイツが出会ったのはつい最近のことで、逆になんで俺が知ってると思ったんだ。
俺が知ってるのはなおきりさんが善と悪の2人いる、ってことだけ。あとそれをじゃぱさんがしたってことと。
奴は一息おいて、また口を開く。
もう言わなくていい、と途中で言おうとしたが、そんなことを言う隙は与えられなかった。
次々と溢れ出る言葉に、冷や汗が流れる。
奴はニコッと、俺に笑ってみせた。
頭の中が、急に真っ白になる。
奴の言っていることが、理解できない。
いや、理解したくないという方が正しいのか。
一瞬猛烈な怒りが湧き上がって、でもすぐに収まって、今度は絶望が湧き上がって、それもまたすぐに収まる。
...こいつが、国を潰した犯人。
こいつが、俺の両親を殺した犯人。
________こいつのせいで、俺たちは。
何も考えられなくなる。
ただよく分からない感情が俺を襲って、目の前が何も見えなくなる。
バコッ
そう音が響いて、俺の足に衝撃がきて、奴が床に倒れ込んで、俺はようやく自分の行動に気づいた。
足元で腹を押さえながら、奴は呟く。
自分が今どんな顔をしているのか、分からない。
そう言いながらも笑いながら立ち上がる彼に異様に腹が立って、俺は侮蔑の視線を送る。
頭ではほぼ何も考えていなくて、俺の中でぐるぐる回る感情だけが、複雑に絡み合っている。
奴は腹を押さえながら、椅子へと座り込む。
......違う。
そんなこと、あり得ない。
今俺の1番信頼してるあの人が、俺の家族を殺しただなんて。
そんなわけ、ない。
だって俺は、何度あの人に助けられたのか。
...世の中には知らない方が幸せなこともある、と言う。
まさにこれだな、と思う。
両手を上げ、無防備に俺の前に座る。
視界の端にナイフが見える。
今まで感じたことのない殺気が、胸の奥底から湧き上がって収まってくれない。
_______今、こいつを殺してしまえば。
殺せる。簡単に。
親の仇と、俺の苦労と、みんなの苦労を全て、終わらせられる。
でも一つ、疑問が残る。
だって、そうだろ?
俺がこいつを殺したいほど憎んでいるということは、じゃぱさんも同じはずなんだ。
2人に分けたから、記憶が無くなったからって罪が許されていいはずがない。
いや、俺が許さない。
________それがたとえ、俺に尽くしてくれた人であったとしても。
でもさ、なんで。
頭の中で何かがよぎる。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。