第65話

60話「罪」
454
2026/04/21 13:19 更新
うりside

...ったく、本当に最悪の気分だ。


なんでこうなるのか。


どんな条件を呑んだとしても、奴の思うツボってわけか。


うり
...てか俺、まだ状況把握しきれてないんだわ
うり
ちゃんと説明してくれよ、偽モンのなおきりさん
なおきり
だーかーらー、僕本物だって言ってるでしょ
なおきり
なんなら僕の方が本物に近いと思うけど?
うり
なんで?
なおきり
だって僕らは善と悪で分かられたんだ
なおきり
正確には分からないけど、善が3割、悪が7割とかじゃないかな?
なおきり
だからなおきりの70%は僕の方ってこと
うり
...なるほどな
俺は手につけられたリストバンドを見つめる。


盗聴器とGPSだなんて、ほんといい趣味してるよな。


裏切りは許さないってことか。

うり
ところで偽モンのなおきりさん
なおきり
いや、だから本物だって...
善とか、悪とか、そんなことはどうでもいい。


誰が何を言おうと俺からすればこいつは偽物で、いつも一緒にいたなおきりさんが本物だ。

うり
...なんで俺を選んだ?
なおきり
あぁ、それね
なおきり
それはただ僕が君のこと気に入ったからだよ

そう言われ、俺はきょとんとする。
うり
...それだけ?
なおきり
うん、それだけ
うり
俺が王子だからとか、そういう理由じゃなく?
なおきり
ううん、ただ本当に顔が気に入っただけ
うり
はぁ...?
くっそ意味わかんねぇ。


てか本当にそうだとしたら、飛んだヤバいやつだなコイツ。
うり
あんた元々牢屋にいたんだろ?
うり
なんの罪を犯したんだよ
なおきり
......

俺がそう問いかけると、奴は驚いた顔をして俺の顔を見つめる。
なおきり
...本当に、何も知らないんだね
うり
はぁ?知ってるわけないだろ、あんたのことなんて

俺とコイツが出会ったのはつい最近のことで、逆になんで俺が知ってると思ったんだ。


俺が知ってるのはなおきりさんが善と悪の2人いる、ってことだけ。あとそれをじゃぱさんがしたってことと。

なおきり
何の罪を犯したか、って聞いたよね
奴は一息おいて、また口を開く。

なおきり
窃盗、連続殺人、強盗殺人、詐欺、暴行、密輸、脅迫...あとはー、何だっけな

もう言わなくていい、と途中で言おうとしたが、そんなことを言う隙は与えられなかった。


次々と溢れ出る言葉に、冷や汗が流れる。
なおきり
あー、たしか監禁して拷問とかもしたっけな
なおきり
でも1番楽しかったのは_______








奴はニコッと、俺に笑ってみせた。












なおきり
______やっぱ城を燃やした時のことは、忘れられないよね



うり
......は?




頭の中が、急に真っ白になる。






奴の言っていることが、理解できない。




いや、理解したくないという方が正しいのか。










一瞬猛烈な怒りが湧き上がって、でもすぐに収まって、今度は絶望が湧き上がって、それもまたすぐに収まる。





なおきり
流石に思い切ったよ、あれは
なおきり
だって国のテッペンを殺して、国の象徴を潰すんだもんね


...こいつが、国を潰した犯人。



こいつが、俺の両親を殺した犯人。









________こいつのせいで、俺たちは。










何も考えられなくなる。









ただよく分からない感情が俺を襲って、目の前が何も見えなくなる。















バコッ






そう音が響いて、俺の足に衝撃がきて、奴が床に倒れ込んで、俺はようやく自分の行動に気づいた。



なおきり
...いっ、だぁ、、

足元で腹を押さえながら、奴は呟く。


自分が今どんな顔をしているのか、分からない。
なおきり
...いや、流石だね
そう言いながらも笑いながら立ち上がる彼に異様に腹が立って、俺は侮蔑の視線を送る。


頭ではほぼ何も考えていなくて、俺の中でぐるぐる回る感情だけが、複雑に絡み合っている。

なおきり
...ちなみに、何も知らないみたいだからもう一つ教えてあげる


奴は腹を押さえながら、椅子へと座り込む。

なおきり
僕が善と悪に分かれたのは、城を燃やした後の話だ。
なおきり
まぁつまり、君の信頼するもう1人の僕も、君の両親を殺した犯罪者ってこと。
うり
......は、
なおきり
だって2人に分かれたから、今はいい人だからって罪が許されるはずないでしょ?
なおきり
もう1人の僕は記憶がないみたいだけど...それが君の両親を殺して許される理由になる?
うり
......

......違う。



そんなこと、あり得ない。




今俺の1番信頼してるあの人が、俺の家族を殺しただなんて。







うり
...そんなこと、絶対にありえない
うり
お前が1人で殺したんだ
うり
なおきりさんが、そんなことするはずない
なおきり
当然だけど、僕が牢屋に入ったのは城を燃やした後だ
なおきり
じゃぱぱ王子は城を燃やした僕を捕まえるために、僕を2人に分けたんだよ
うり
......
なおきり
...まぁここまで説明しなくても、本当は理解してるんだろうけど

そんなわけ、ない。


だって俺は、何度あの人に助けられたのか。


なおきり
まぁ君がそんなこと気にしないっていうなら別にいいんだけどさ
なおきり
あいつは今はいい奴でも、元は犯罪者ってことは知っておいた方がいいよ

...世の中には知らない方が幸せなこともある、と言う。


まさにこれだな、と思う。

なおきり
もし"僕ら"のことを許せないのなら、別に殺せばいい
なおきり
さっきも言ったけど、僕も抵抗はしないよ

両手を上げ、無防備に俺の前に座る。



視界の端にナイフが見える。




今まで感じたことのない殺気が、胸の奥底から湧き上がって収まってくれない。








_______今、こいつを殺してしまえば。







殺せる。簡単に。




 

親の仇と、俺の苦労と、みんなの苦労を全て、終わらせられる。





うり
......

でも一つ、疑問が残る。





だって、そうだろ?





俺がこいつを殺したいほど憎んでいるということは、じゃぱさんも同じはずなんだ。





2人に分けたから、記憶が無くなったからって罪が許されていいはずがない。


いや、俺が許さない。



________それがたとえ、俺に尽くしてくれた人であったとしても。






でもさ、なんで。




なおきり
殺さないの?
うり
.......


頭の中で何かがよぎる。








うり
......なんでじゃぱさんは、なおきりさんを騎士団に入れたんだ?

プリ小説オーディオドラマ