映った光景を見た瞬間、特に動揺することはなかった。
だって、
もうそれは4年前に経験した悪夢だったのだから
崩れ落ち、砂埃が舞っている民家。
襲撃により、大人や老人、子供死骸がそこらじゅうに力無く横たわっている。
そしてそんなボロボロとなった街の奥にあるのは紛れもない、旧W国の城。
間違いない。
これはイグモ戦争時のW国だ
悪夢で何度も見たが、結局慣れることは出来ないまま過ぎさっていったこの景色が、今も目の前に残り続ける。
血や土、傷だらけで横たわる子供の目の前に片膝を立て、顔が見えるように手で動かす。
そこに映ったのは、生気のない子供の目。
その姿は、性別すらも分からない程に傷んでいて、ここには、もう、何も残っていなかった
その時、炎の音が、燃え盛るそれを遮るようにして響く衝撃音が、奥から聞こえてくる。
耳を傾ければその音は、何故か聞き馴染みのあるような、いつかの時に聞いた音に似ていて...
まるでそれに釣られるように、1歩、1歩と足を踏む。
燃えて粉々になった木材
炎によって真っ黒になり原型も消えた葉
人だったはずの、ナニカ
全てに背を背け、響く衝突音の方へ魅了されたように足を運んでいけば、炎の間から光が差し込んでくる。
その光は、酷く苦く気分の悪い____
さっきまでの衝突音が消えたのと同時に、視界に2つの影が映り込む。
血を吐き出しつつも、自らに刺さる剣に優しく触れる金髪の青年と、
そんな彼とは反対に、肩で息を吸いながら、金髪の青年に剣を突き刺し、真っ赤に染まった剣を見つめ、弱々しい声を漏らす青髪の青年がいた。
あぁ、分かってたよ。
それは紛れもない過去の自分だと、そんなこととっくに。
自分の声を遮るように、未熟で弱虫な過去の自分が声を上げる。
力無く倒れていくぺいんとを支えながら流れ出る血を止めようと、必死に傷口を抑える。その渦中で、自分の犯した過ちを理解しきれぬまま、涙を零していた。
近くに居るはずなのに、遠い。
過去に経験した記憶を何度も見るのは、やはり堪える。
でも、
もうあと少し我慢すれば....
この走馬灯も____
その言葉が聞こえた瞬間、全身が拒否反応を起こすようにして固まる。
ゆっくりと、顔を向ける。
いる。
そこに
「顔も手も足もない、真っ黒なナニカが残るソイツが」
水の流れのように止まることなく進む話の中で、らっだぁはただこの現状に酷く混乱していた。
何故なら今までの悪夢は全て、ここまで話が進んだことなどなかったからだ。
過去の自分がぺいんとを刺し、止血しようと応急処置をする。
似たような夢を見た時、必ずここで終わっていた
それだというのに、今は止まることなく言葉が連なる。
そして何よりも
今までの夢は、全て自分が体験し、記憶に残り、覚えていた内容ばかりだった。
それだというのに、
知らない。
こんな話をあの男とした記憶も
こんなにも声を荒らげて男と会話した記憶も
全て、身に覚えがない。
自分の勝手な想像による延長線上の夢なのかと、頭を抱える。それなのに、どこか既視感だけは拭いきれず、気持ち悪さと汗がじんわりと残る。
その言葉が、まるで今の俺を見ているように鋭く、冷たかった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。