第16話

END3
168
2025/01/18 08:00 更新
12話より↓
裏ト
僕と付き合ってください
ボクの服を掴む彼の力がいっそう強くなる

緊張からか、その華奢な体は小さく震えていた

ボクは……





ボクは、震える彼の体を

力いっぱい抱き返した

その衝動的な行動に自分自身で驚く

頭の中では、自問自答が繰り返されている

ボクはどうして、今彼を抱きしめたんだろう?

それは…

「いむくんの事が好きだから」

…そうそう、それでね…
裏ト
前に、初兎ちゃんと2人で行ったカフェに1人で顔出してみようとしたんだけどさ
裏ト
その日、運悪く大雪で
裏ト
僕の腰くらいまで雪が積もっててさ、カフェまでの道が塞がっちゃってたの
裏ト
このあたりじゃ、よくあることなのかな?
裏トの告白から、数ヶ月が経過したある日

ボクは、彼を自宅に招いていた

ボクらが付き合うようになってから

彼が部屋に入るのは、これがはじめてだった

裏ト
諦めて帰ろうかなーと思ったらね?
裏ト
クマさんみたいな大っきいおじさんが、後ろから現れて
裏ト
雪を気にせずにグングン前に進んでいくの
裏ト
これはチャンスだーと思って
裏ト
クマさんの後ろにくっついてたら、無事にカフェに入れたんだよー
裏ト
おかしいよねーあはは
裏トは、緊張しているのか少しだけ早口で

時折、チラチラとこちらの顔色伺っているようだった

裏ト
……初兎ちゃん?
裏ト
僕の話、面白くないかな?
初兎
ううん…そんなことないよ
ボクはこの数ヶ月間ずっと考えてきたことを

裏トに伝えようと思っていた

そのせいで、少し上の空になってしまっていたらしい

スマホで時刻を確認すると

21時を過ぎようとしていた

初兎
…あのさ
裏ト
は、はいっ
裏トが緊張したような声で返事をする

その瞳は、なにかを期待するかのようにゆらゆらと揺れ動いていた

初兎
そろそろ帰る?
裏ト
…えっ?
裏ト
ああ、ごめんそうだよね
裏ト
…帰らなきゃだね
初兎
送っていくよ
裏ト
…うん、ありがと
裏トは少しだけ肩を落とすと、立ち上がる

そのままボクに背を向けると

コートに袖を通しながら声をかける

裏ト
初兎ちゃんはさ…
裏ト
今でもその…
ボクは彼の背後にそっと近づく

そして…

彼の後頭部を鈍器で思い切り殴った

裏ト
ゔっ!?
鈍いうめき声と人が倒れる音が耳に響く

裏ト
ううう…
裏トはうつぶせのまま苦しそうな声をもらす

初兎
裏ト…裏ト…?
ボクは裏トの名前を呼ぶ

裏ト
痛い…な…なんで…?
彼は頭を抑えたまま、か細い声を出す

ボクは、彼の腕を引き立ち上がらせると

そのまま彼の体を壁に押し付けた

初兎
あれれー?おっかしいなあ
裏トから聞いた話では

母を失った…すなわち強いショックによって

いむくんという人格が生まれたという

初兎
力加減を間違えたかな?
裏トは怯えた表情でボクを見ていた

体はガクガクと震え、とても恋人に向けるような態度ではなかった  

裏ト
どうして…?
裏ト
僕の事、好きだって…
初兎
どうしてって
初兎
あはは
初兎
嫌だなあ、ボクがキミの事を本気で好きになったと思ったのか
裏ト
…え?
裏トと付き合うようになってから色々な場所に遊びに行った

その全てが…

ボクといむくんの思い出の場所だった

初兎
ボクさ、これでも結構我慢したんだよ
初兎
でも、どこへ行っても記憶はちっとも戻らない
初兎
それならもう、こうするしかないじゃないか?
初兎
本当はボクだって嫌だよ?
初兎
いむくんの、彼の体を傷つけたくはないからね
裏ト
…僕と付き合ったのは…その為…?
裏トが瞳に涙を浮かべながら叫んだ

裏ト
僕のこと、好きじゃなかったって事?
初兎
…うるさいなあ
初兎
そんなの、当たり前じゃないか
初兎
だって…
初兎
キミは‪”‬いむくんのニセモノ‪”‬なんだからさ
初兎
ボクが、ニセモノの方を好きになるハズがないだろ?
裏ト
…違っ…僕が本物…
初兎
ああ、もういいから
初兎
今度は、もう少し力を強くするからさ
初兎
頼むね?
初兎
今度こそ、‪”‬元‪”‬に戻ってよね
ボクは、再び彼に向け鈍器を振りかざす

裏ト
ひっ…
裏ト
やめて…助けてっ…!
彼は恐怖で顔を歪めたまま

ボクに向かって精一杯叫び声を上げた

初兎
やめてくれ…
初兎
いむくんはそんな顔しない
初兎
ニセモノはさっさと消えてくれ
ボクは、腕を振り下ろす

初兎
いむくん…
初兎
これで、やっと…



バキッ






ドンッ






バキッ





BAD END3  「キミに会いたい」

プリ小説オーディオドラマ