12話より↓

ボクの服を掴む彼の力がいっそう強くなる
緊張からか、その華奢な体は小さく震えていた
ボクは……
ボクは、震える彼の体を
力いっぱい抱き返した
その衝動的な行動に自分自身で驚く
頭の中では、自問自答が繰り返されている
ボクはどうして、今彼を抱きしめたんだろう?
それは…
「いむくんの事が好きだから」
裏トの告白から、数ヶ月が経過したある日
ボクは、彼を自宅に招いていた
ボクらが付き合うようになってから
彼が部屋に入るのは、これがはじめてだった
裏トは、緊張しているのか少しだけ早口で
時折、チラチラとこちらの顔色伺っているようだった
ボクはこの数ヶ月間ずっと考えてきたことを
裏トに伝えようと思っていた
そのせいで、少し上の空になってしまっていたらしい
スマホで時刻を確認すると
21時を過ぎようとしていた
裏トが緊張したような声で返事をする
その瞳は、なにかを期待するかのようにゆらゆらと揺れ動いていた
裏トは少しだけ肩を落とすと、立ち上がる
そのままボクに背を向けると
コートに袖を通しながら声をかける
ボクは彼の背後にそっと近づく
そして…
彼の後頭部を鈍器で思い切り殴った
鈍いうめき声と人が倒れる音が耳に響く
裏トはうつぶせのまま苦しそうな声をもらす
ボクは裏トの名前を呼ぶ
彼は頭を抑えたまま、か細い声を出す
ボクは、彼の腕を引き立ち上がらせると
そのまま彼の体を壁に押し付けた
裏トから聞いた話では
母を失った…すなわち強いショックによって
いむくんという人格が生まれたという
裏トは怯えた表情でボクを見ていた
体はガクガクと震え、とても恋人に向けるような態度ではなかった
裏トと付き合うようになってから色々な場所に遊びに行った
その全てが…
ボクといむくんの思い出の場所だった
裏トが瞳に涙を浮かべながら叫んだ
ボクは、再び彼に向け鈍器を振りかざす
彼は恐怖で顔を歪めたまま
ボクに向かって精一杯叫び声を上げた
ボクは、腕を振り下ろす
バキッ
ドンッ
バキッ
BAD END3 「キミに会いたい」











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。