俺は止まったまま、廊下のど真ん中で腕を組んだ。
返事はない。
が、気配だけはある。
右斜め前。
距離、二メートル。
そこに“何か”いる。
俺は何もない空間を指さした。
一拍置く。
数秒の沈黙。
空気が、歪んだ。
次の瞬間。
人が湧いた。
いや、正確には、
いきなり人が生えてきた。
(徐々に出てくる的なやつ)
何食わぬ顔で立っているのは、
黒猫のフードを被っている男性だった。
互いに黙る。
俺は、ゆっくり口を開いた。
そうだよ。
心臓に悪いにもほどがある。
俺はため息をついた。
即答だった。
不思議と、名前が引っかからない。
むしろ、しっくりくる。
クロノアは軽く笑った。
俺がツッコむと、クロノアは肩をすくめる。
なぜか、胸の奥がざわっとした。
俺は鼻で笑う。
そのとき。
【監視カメラ:無効化中】
【外部アクセス検知】
視界に、新しい表示。
クロノアが楽しそうに言う。
彼は俺を見た。
俺は即答した。
二人同時に言う。
数秒後、俺たちは同時に吹き出した。
クロノアは笑って、言った。
俺はうなずいた。
それでも。
俺がそう言うと、
クロノアは迷いなく頷いた。
こうして、
最初の一人目が合流した。
完璧な作戦に、
足りないのは……
まだ、記憶だけだった。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。