第115話

114. 珠代様、麗しゅうこと
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2024/05/17 22:54 更新
胡蝶しのぶ
珠代さん、こんばんは。
珠代
ようこそいらしてくださいました。
珠代様はそういって頭を下げた。
硝子玉のような深紫の瞳はどこまでも慈しみ深く、美しい。また牡丹の花のような匂いはこの方の匂いだった。

風貌こそ人と変わりないが、この匂いは紛れもなく鬼の匂いだ。
霜月 琥珀
珠代様、初めまして。私は霜月琥珀と申します。
珠代
ごめんなさいね、精密機器はここにしかないものだから。さっそくだけど、お願いしてもいいかしら。
霜月 琥珀
もちろんです。何なりとやってください。
奥の部屋に機械があるそうだ。

なぜだろう、後ろから殺気が感じ取れた。私へ向けられた、真っ直ぐな殺意。
霜月 琥珀
そこの方、私を殺したいのでしょうか?
愈史郎
…どうして気づいた?珠代様に近づくんじゃねえ、とりあえず死ね!
びゅんと私のところへ走ってきて、そう耳打ちをしきた。ものすごい形相で睨みつけてくる銀髪の少年。
しかし、その言葉に込められた思いは「お前を殺したい」ではなく、「珠代様に近づくな」の方が大きいように思える。彼と珠代様の信頼関係があってこその発言だと感じた。
霜月 琥珀
殺意が剥き出しでしたから、すぐにわかりました。ですが、その殺意は珠代様の事が大切でたまらないからなのですね。
彼の強張った目を見つめ、そう言い放った。
彼は一瞬瞳孔を開いて、驚いたような素振りを見せた。
愈史郎
なっ…!
珠代
愈史郎、琥珀さんはお客さんよ。失礼なことはやめなさい。
愈史郎
はい…。
弱々しい返事を返して帰っていくが、目を凝らすと扉の隙間から私のことを睨みつけていた。わかっていますよ、珠代様には何もしません、と言っても愈史郎くんには効かないのだろう。

そんなにも大切に想っているのだから。

珠代
少し、血を抜きますね。
霜月 琥珀
はい。

珠代様が抜いた血を透明な板に乗せ、蟲柱様が顕微鏡で観察した。その後何やらよくわからない機械に通して見ていた。
胡蝶しのぶ
これは…!珠代さん、見てください。
珠代
すごいわ、琥珀さん!あなたも実弥さんと同じ、稀血の中の稀血なのね。これは対無惨戦の毒薬作りに役立つかもしれません。
霜月 琥珀
本当ですか?よかった、私の血が役に立ったんですね。もっと、一升分くらい抜いていいですよ。
胡蝶しのぶ
琥珀さん、それはだめですよ。あなたが倒れちゃいます。前にも言いましたよね?
霜月 琥珀
そうですか…。
蟲柱様はこんな私にも気遣いをしてくださる、優しい方だ。

二人はあれやこれやと難しい話を始めたので、私はいいことを思いついた。羽織の衣嚢に入っている紙と万年筆を取り出して、つらつらと筆を進めた。

そして、未だに扉の隙間から睨んでいる愈史郎くんの元へ。
霜月 琥珀
これ、あげます。

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