-----あなた視点-----
車が出発してから、
さりげなくかけてくれた車のロックも、
あなたの一人称の冷たい手をあっためようとして重ねてくれた大きな左手も、
「彼女のためだけのボーカルのみライブします」なんて言って始まった生歌も。
“みんなの”さとっちゃんはもちろんのこと、
“彼氏の”さとっちゃんも、すごい素敵な性格だ。
さとっちゃんの生歌をバックに、窓ごしに朝の街中を楽しみながらしみじみ思う。
大学に到着したところで
ちょうど生歌の “ コーヒーとシロップ ” が終わったため、余韻に浸る。
さとっちゃんは車のロックを外す。
自分は彼に向かって、精一杯感謝をこめた深いお辞儀をした。
車の時間を見ると、
7 : 2 6 と表示されている。
前髪をかきあげるさとっちゃん。
※かっこいい
このままさとっちゃんと2人でいたい。
さとっちゃんと離れたくない。
どうせ行ってもひとりぼっちだし。
という思いが脳裏によぎるが、だったらなんでここまで来たんだ ということになるだろう。
ため息をこらえて荷物をまとめ、降りる準備をする。
声のした方に顔を向ける。
今のあなたの一人称にとって1番言って欲しかった言葉かもしれない。
思わずニヤッとしてしまった。
帯に乗せるように言葉を放っていくさとっちゃんは、
「行かないで」と言わんばかりにあなたの一人称の手を握ってくる。
先程の甘えるような「だめっ?」とは裏腹に、凛々しいガッツポーズを見せた。
今度はさっきよりも大きく、優しく左手を重ねられる。
あなたの一人称がその手を軽く握り返すと、車が出発し、朝早くのモーニングデートが始まった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。