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第1話

雨の夜の生徒会本部
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2026/01/01 12:47 更新
夜の生徒会本部は静かだった。
雨が窓を叩く音だけが、規則正しく響く。
生徒会本部の明かりの下、
霧隠ラントは書類の山に向かってペンを動かしていた。
机の上の書類を何度も整え、起き直す。
その仕草は几帳面に見えるが、
どこか無意識に心を落ち着けようとしているようでもあった。
肩が少し重い。
窓の外に目をやると、濡れた所が灯りが反射して、
ゆらゆらと揺れている。
ラントは一瞬だけ目を細め、
また手元に視線を戻した。
言葉にはしないが、
夜の静けさと雨の音が心に少しずつ染み込む。
ドアの微かな音が、静寂の中で響いた。
参歩ツトム
会長、まだいたんですか?
落ち着いた声。
ラントはわずかに顔を上げる。
参歩ツトムが、傘を手に立っていた。
濡れた服を気にする素振りもなく、
ただじっとラントを見つめている。
霧隠ラント
......あぁ、少しだけだが
短く淡々とした返事。
言葉に余裕はないが、頼るつもりはない。
ラントは再び書類に目を落とす。
参歩ツトム
手伝います
ラントは手を止めずに視線だけを向ける。
霧隠ラント
大丈夫だ
淡々とした声。
微笑むことも、頼ることもせず、ただ現状を受け入れる。
ツトムはそれを見て、口元をわずかに引き締め、
無理に何かを言わず傍に立った。
雨の音と二人の静かな空気が、生徒会本部を包む。
ラントは書類を整えながらも、
ふと心の奥で、わずかに安堵を感じた。
誰かの存在が、こんなにもさりげなく、
でも確かに伝わることがあるのだと。
やがてツトムは傘を手に取り、
静かにドアに向かう。
参歩ツトム
じゃあ、また明日
ラントは答えず、ただ頷くだけ。
ドアが閉まる音と雨音が重なり、
再び生徒会本部は静かになる。
机に戻り、手を動かしながら窓の外を見る。
それでも、今夜だけは、
誰かの気配がそっと傍にあったことを、
静かに感じることができた。

𝑒𝑛𝑑.

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