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第64話

第64話 前を向いて
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2026/01/30 04:29 更新
武蔵
長門、体調はどうだ?
長門
・・・・・・ああ、随分良くなった。
武蔵
そうか。間宮から朝食を届けるように頼まれていてな。
そう言って武蔵はコト、と朝食の乗ったプレートをテーブルに置く。
湯気を立てているご飯(大盛り)と味噌汁、鮭の塩焼き、出汁巻き卵、青菜のお浸しが乗っていた。
頂きます、と食べ始めたものの、長門の表情は暗い。
清霜
武蔵さん、長門さん!遊びに来たよー!
武蔵
おお、清霜か。よく来たな。
清霜
えへへ~、お喋りしたくてさ!
長波姉たちは早波姉に付きっきりだし。・・・しょうがないのは、分かってるけど・・・・・・。
しゅん、と清霜の眉が下がる。
気遣わし気に武蔵が清霜の頭をそっとなでた。
一方、艦娘寮にて。
満潮
山雲、朝雲、入れてくれないかしら?
最上
僕もいるよ~。
時雨
お邪魔してもいいかい?
朝雲
いらっしゃい、入って。
木製の器にカントリーマアムや煎餅、その他お菓子。
さらにお茶、湯呑みを持って朝雲と山雲にあてられた部屋に入っていった。
最上
山雲、おやつ食べよ。
時雨
カントリーマアム持ってきたよ。
山雲
どうして・・・・・・私に?
満潮
仲間を放っておけるわけがないでしょ。それだけで十分よ。
満潮がそう断言している裏で朝雲と時雨で急須を使ってお茶をそれぞれの湯呑みに入れていく。
かなりの頻度で訪れているだけあり、その動作は手馴れていた。
扶桑
山雲、体調はどうかしら?
山雲
・・・大丈夫、です。
最上
そっか、なら良かった。
山城
そうそう朝雲、日葵さんから質問が来てたわ。艤装の第1改装できるけどやる?ってね。
朝雲
え?できるの!?
山城
ええ。練度は足りてるから、あとは朝雲の思い次第でって。
朝雲
本当?やるやる!
扶桑
山雲、お散歩に行きましょう?
山雲
でも、怖い・・・・・・。
扶桑
大丈夫よ、私たちで守るから。ね?
山雲
・・・・・・じゃあ、ちょっとだけ。
コンコン、と扉がノックされる。
朝凪日葵
はーい、いらっしゃい。
睦月
約束通り来たにゃしぃ!
長女の睦月が代表して扉を開ける。
大湊鎮守府に所属している睦月型姉妹全員が執務室に来たのだった。
朝凪日葵
弥生、水無月、三日月、睦月、如月、卯月、皐月、文月、長月、菊月、いらっしゃい。
お菓子で何か欲しい物ある?
長月
なら醤油煎餅をくれ。
皐月
はいは~い、僕はカステラ!
文月
羊羹食べたいなぁ~。
睦月
アイス食べたい!
卯月
ポテチ食べたいぴょん!
朝凪日葵
オッケー、何味がいい?
卯月
のりしおに決まってるぴょん!
朝凪日葵
はいはい、ちょっと待ってね。
それぞれが好きなお菓子をリクエストして執務室にあるソファに座る。
しかし、弥生、水無月、三日月の3人は緊張からか固い面持ちだった。
如月
弥生、水無月、三日月、とりあえず座りなさいな。
日葵ちゃん、クッキーを4人分貰ってもいいかしら?
朝凪日葵
うん、今出すね。
木と硝子でできた、お菓子が大量に入っている戸棚から市販のクッキーを取り出して応接用の机に置く。
如月が待ってましたとばかりに袋を開け、少しだけ食べた。
如月
このクッキー、とっても美味しいわよ?3人も食べてみたらどうかしら。
水無月
じゃ、じゃあ少し・・・・・・・・・。
恐る恐る、という言葉の表す通りではあるが水無月が個包装の袋を破き、クッキーを口にする。
一瞬驚いたような表情をするが、すぐに笑顔になった。
水無月
如月姉さんの言った通りだ、美味しい・・・!
如月
でしょ?日葵ちゃん、お代わり頂戴。
朝凪日葵
はーい、じゃあ箱ごと持ってくるわ。
睦月
・・・・・・・・・今日は弥生たちがお話したい、って言ってたの。
3人だけだと心細いからって言う事で私たちもいるんだ。
朝凪日葵
・・・・・・うん、なるほどね。
弥生、水無月、三日月・・・・・・まずは来てくれてありがとう。
睦月、如月、卯月、皐月、文月、菊月もお疲れ様。
文月
は~い、じゃあお礼にミルクティー入れて欲しいなぁ!
朝凪日葵
いいよ、お湯が沸くまでちょっと待っててね。
給湯用の電気ポットにシンクから水を入れ、スイッチを押す。
その間に茶葉をティーポットに入れ、冷蔵庫から牛乳を取り出した。
三日月
凄い・・・・・・手馴れてる?
睦月
日葵提督、お茶飲むのが好きなんだよ!
お茶っ葉も買ってね、本格的にやるのとっても上手だし美味しいんだ。
朝凪日葵
やだなぁ、照れちゃうじゃん。
・・・・・・理由の半分くらいはコーヒーが苦いから苦手っていう感じだけどね。
白基調に花柄があしらわれたティーカップをテーブルに並べると、丁度お湯が沸いたポットから電子音が鳴った。
如月
お湯、沸いたみたいね。ティーポットに移しちゃっていいかしら?
朝凪日葵
うん、お願いね。
ことり、と小さな砂時計をひっくり返す。
3分で全ての砂が落ち切るようになっているものだ。
朝凪日葵
長月、菊月、座布団を持って来てもらっても良いかな?
長月
分かった、任せてくれ。
菊月
はーい、任されたよ。
テーブルを囲むようにして日葵と睦月型姉妹が座る。
ソファには弥生、水無月、三日月と卯月、皐月、文月が座り長月と菊月が持ってきた座布団に他全員が座った。
机には全員分のミルクティーが湯気を立てている。
朝凪日葵
えーっと・・・何から話せばいいかな?
如月
日葵ちゃん、そういう所よね・・・・・・。
朝凪日葵
あはは・・・・・・とりあえず自己紹介からにしよっか。
改めて初めまして、大湊鎮守府ここの提督をやっている朝凪日葵です。よろしくね。
弥生
睦月型駆逐艦3番艦、弥生・・・です。
水無月
ろ、6番艦の水無月です・・・!
三日月
・・・10番艦の三日月です。
睦月
・・・・・・じゃあ、次は日葵提督に聞きたいことがあれば何でも聞いていいよ!
水無月
え、っと・・・・・・・・・あの、私たちに優しくしてくれる理由って・・・なんですか?
朝凪日葵
・・・・・・だって、艦娘だって1人の女の子じゃない。
暁の言葉を借りるけど、『一人前のレディー』として接するのは当然じゃないかな?
後は――あれかな、妹の面影をついつい重ねちゃうんだよね。
弥生
・・・妹?
朝凪日葵
うん、8歳下にね。私が今21だから、夜宵・・・私の妹は13かな。
弥生たちよりちょっと大きいくらいなんだ。
如月
・・・妹さん、よくお手紙を送ってくれるのよね。この前は写真が届いたわよ。
三日月
あの・・・・・・・・・私たち、どうなるんですか?
朝凪日葵
どうなる、かぁ・・・・・・私から「こうしなさい」って決めるつもりはないかな。
まだ暫くゆっくりお休みしたいならそれでも勿論良いし、睦月たちみたいに戦いたいなら香取たちに訓練をしてもらえるようにするし。
弥生、水無月、三日月・・・・・・あなたたちがそれぞれやりたい事をやりたいように選んで、それをやって欲しいな。
時間は沢山あるから、いっぱい悩んで後悔が無いように決めて欲しいと思ってるよ。
じゃあ、と三日月が窓の外を見る。
窓の外では朝雲が陽炎や雪風たちと追いかけっこをしている。
全員のティーカップは、気付けば残り3分の1くらいまで量が減っていた。
三日月
外で遊んでる朝雲みたいに、私も一緒に遊びたい・・・・・・です。
出撃とか、遠征は・・・・・・まだ、暫く考えたいなって。
朝凪日葵
うん、良いと思うよ。
ウチの子たちは皆優しい子だから、「入れて」って一言話しかけてごらん。
三日月
・・・はい!
朝凪日葵
弥生と水無月はどう?
水無月
私、は・・・。
まだ考えたい、です。・・・・・・ずっとお部屋にいたから、ここのこと全然知らないし・・・。
朝凪日葵
そっか、色んな物を見てゆっくり考えてみて。
睦月
弥生、どう?こんなことやりたいとか、ないかな?
弥生
・・・・・・・・・分かんない。
ここで出来ることが多すぎるから、これ以上何を望めばいいの?
朝凪日葵
あ、そんな弥生にお助けアイテムを渡そうかな。
そう言って日葵が執務室の引き出しから取り出したのは1冊のパンフレット。
・・・・・・満潮が秋雲に頼み込んで作ってもらった、クラブ活動についての物だ。
睦月
・・・あ、この前秋雲ちゃんが作ってたやつ!
朝凪日葵
よく気付いたね、睦月大正解!
・・・ここは色んな事が出来るから、スタンプラリーみたいに回ってみると良いよ。
弥生
・・・・・・ありがとうございます。
大沢晴翔
・・・夕張、それで話って?
夕張
この後のことで・・・・・・1つご相談があるんです。
大沢晴翔
うん、言ってごらん。
夕張
・・・・・・・・・艦娘としてあるまじきこと、というのは分かった上でなんですけど・・・。
私、海に出るのは・・・・・・怖くて。
出撃も、遠征も・・・・・・出来そうにない、んです。
大沢晴翔
・・・・・・・・・これは俺の持論なんだけどさ。
戦争って、前線で戦う事だけじゃないと思うんだ。
夕張
・・・え?
大沢晴翔
戦争って、前線で撃ち合って戦うモノだって思われがちだけど。
その後ろで怪我をした人を治すお医者さんがいたり、戦ってる人のご飯を作る農家さんがいたり、弾を作るために働いている人がいるから戦争って成り立つと思うんだ。
夕張
それは、確かに・・・・・・。
大沢晴翔
ウチだって、朝日は前線じゃ多分ほとんど戦力になれないよ。
けど後方支援ではどうだ?間宮と同じか、もしかしたらそれ以上に貢献してるだろ?
夕張
・・・はい。
大沢晴翔
だから、夕張も朝日みたいに工廠とかで手伝ってくれればいいさ。
夕張
ありがとうございます!

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