「俺の彼女になってほしい」
え…時間が止まったように頭が働かなかった。
自分に都合のいい夢でも見ているのではないか。
及川くんがそんなこと言うはずない。
そんな感情が、頭をぐるぐると回っていて、
上手く言葉に出来ないし、声も出ない。
「ずっと、両想いだと思ってた、安心してた」
ポツリポツリと及川くんは言葉を紡いでいく。
「言わなくても分かってくれる。
あなたも俺のことが好きで、俺も○○が好き。
もう付き合ってるも同然だって。」
壁についていた手を離し、
私を優しく包み込む。
「でも、言わないと分からないし…
あなたはさっきの奴が好きなわけ?」
少し泣きそうになっているような声。
か細くて掠れてる。
「さっきの人とは、今日合コンで会っただけで…」
「はぁ!?合コン!?」
さっきのしんみりとした空気が嘘みたいに、
バッと私を抱きしめていた身体を離し、
大声で叫ぶ。
「なんでそんなとこ行ってるわけ!?
及川さん驚きなんだけど!?」
いつもの及川くんに戻ったみたいで、
少しほっとした。
この空気感が1番落ち着く。
「ねぇ、なんで笑ってるわけ?
俺怒ってるんだけど」
「んー…及川くんが好き」
ふふっと笑ってそう言えば、
一気に顔を赤くした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。