第29話

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2020/09/05 13:00



ここ数ヶ月、立て続けに続く舞台のお仕事。

ひとつ終わる前には、新しい舞台の稽古が始まり、龍太くんは休む暇もないくらい、いつでもフル回転。



『よし、これでおっけー』



タッパーやフリーザーバッグにおかずを入れて、メモを残す。ご飯は小分けにして冷凍庫に。

脱ぎ散らかしたままの服も、洗濯して、乾かして、畳んで…。



『お母さんみたいやなぁ、』



そんな事を1人呟いて。



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龍太くんが
こんなに忙しいのは過去に例が無いくらい。

長年の努力が花開いて来たんや…なんて頭の中では理解してるのに、会えない日々に寂しさを感じる。



hamanaka
hamanaka
おはよう、千秋楽お疲れ様😊
立て続けに次の舞台やけど、無理しすぎないようにしてね💦

ご飯作り置きしといたよー。



最後のメッセージは既読がついたまま、2週間が経っていた。

作り置きして置いたものはほとんど冷蔵庫から無くなっていて、タッパーは洗って水切りに置かれている。



『ちょっとでもええから…会いたいなぁ、』



こんなに会えなくなるのも、龍太くんから連絡が無いことも、今までに無いことで、いつになく寂しさが募っていた。



_



その日は、内部の舞台の打ち合わせが長引いて、事務所を出たのが22時を過ぎていた。



龍太くんからのメッセージは、

今日も来なかった。



駅までの近道のために、
繁華街を抜けようと、1人早歩きで歩く。



♡「ほーらー!室くんこっちだよ!」



…そんな声にピタっと足が止まる。

室くん?まさかね?

その声の方向に振り向くと、



龍「ちょぉ待ってって、早いんすわ、♡♡さん」

♡「ほら、行くよー」



紛れも無く、龍太くんの姿で…。

そのまま女の人に呼ばれて、満更でもなさそうな表情をして、腕を引かれて飲み屋さんに入っていった。



『…え、』



仕事のお付き合いだろうし、きっと、共演している女優さんかもしれない…追いつかない自分の頭にそう言い聞かせながら、駅までの道をまた歩き始める。



さっきまで早足だったわたしの足が、
鉛のように重たく感じた。



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