第26話

#.26 2人きりの空間で
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2025/12/15 09:00 更新
初めは何も見えない真っ暗な空間だった


だけどある日、声が聞こえた。
気のせいだったんじゃないかと耳を疑ったが、紛れもない絵斗の声だった。


それから俺は、体と魂が分離している状態だということも察した。
この真っ暗だった空間に、俺はまたいる。
猿山 らだ男らっだぁ
 はー……情けないわぁ 

夢を叶えるために偶像の力を使ったのに
その先でこの力に飲まれてしまっては意味がないではないか。





ふと、俺は過去のことを思い出す。
俺は教師になりたかった。

だけど周りがそれを許してはくれなかった。
教師になるくらいなら政治家になれと祖父に言われ、教師になるといえば周りがもったいないと呟く。


そんな狭くて苦しい空間で過ごしていたら、"逃げたい"と俺が思うのにそう時間はかからなかった。



小学生4年の頃、俺は絵斗に初めて話しかけた。
あまりにも絵斗が、鏡で見る俺の顔と同じ顔をしていたから。


生きるのが辛いけど


それを隠して生きなきゃいけないから


空元気を振りまいて


今にも死にたいのに


それを隠そうとしてるのに



____隠しきれない。
2人きりの空間で、俺たちは秘密の契約を交わした
猿山 らだ男らっだぁ
 ッ……、はぁ、 

ここは……どこだろうか?
そんな疑問を抱いても、誰も答えてくれやしない。
頭ではわかっている。
俺は呪いに飲まれた。

負けたんだ、心が……。
猿山 らだ男らっだぁ
 ……チッ…… 
そうやってイライラして


自ら願って消し去った記憶を惜しんで
猿山 らだ男らっだぁ
 ……絵斗… 

どうしてあのとき、あんな願い事をしてしまったんだろう




一時の辛さと怒りに身を任せて



この世の全てから俺を消し去って欲しいと




……俺が偶像に捧げた願いは、




"この世の全ての人間から俺に関する記憶を消し去って、



俺を教師にして欲しい"


誰も俺のことを知らずに


猿山家の血を継いだ人間だとは思わずに
猿山 らだ男らっだぁ
 ……ただ普通の人間として 
教師として……
俺を見て欲しかっただけなんだ


あぁ、この世界は本当に


愛らしい憎い






鳥井希視点
鳥井希ゾム
 ……あぁ〜〜 
首切られたなー
一時リタイアとはいっても、ここから帰ってこられるかどうかは怪しい。

なにせ呪いの祭りに血を捧げてしまったから……。
天乃呂戊太ロボロ
 どうしたんや、えらいため息ついて 
鳥井希ゾム
 ッロボロ!? 
まさか聞かれているとは思わなかった


と、いうよりここに俺以外の誰かがいるとは思わなかった。
天乃呂戊太ロボロ
 ……そない敵意向けんでも… 
俺は諸悪の根源ちゃうぞ
鳥井希ゾム
 ……なんでこんなとこおんの? 

そういって俺は辺りを見回す。


ここは俺とロボロ以外誰もいない2人きりの空間だ。
周りには草原が広がっているが、何せ2人しかいないので少し寂れた空間になっている。


ギラギラと輝く太陽が、俺たちを照らしている。
天乃呂戊太ロボロ
 ……うーん、なんでやろなぁ?
らだ男先生に聞いたんやけどな?
天乃呂戊太ロボロ
 ここは偶像の中の世界や、…って 
鳥井希ゾム
 え?猿おんの? 
天乃呂戊太ロボロ
 ……ほら、あそこで寝てるやろ? 
そうロボロは猿が寝ている木を指さし、またくるっと俺を見る。
鳥井希ゾム
 …あぁ、ほんまや 
鳥井希ゾム
 …てか、偶像の中の世界ってことは… 
鳥井希ゾム
 お前、偶像の力使ったんか? 
天乃呂戊太ロボロ
 ……うん
ゾムは知らんの?俺、兄さんを……
そこまで言われて、気づく。




そういや俺、刑事さんにその事言ったな?
……なんで忘れてたんやろか
鳥井希ゾム
 ……思い出したわ、
確かにそーやったなぁ
天乃呂戊太ロボロ
 ここから出たくて、 
脱出方法探ってんねんけどな?
天乃呂戊太ロボロ
 まっっっじで見つからへんねん
らだ男先生に聞いてもな、
ずーっと寝とるし、起きてくれへんし…
天乃呂戊太ロボロ
 ゾムは……分からへんか? 
鳥井希ゾム
 せやなぁ 
鳥井希ゾム
 これは俺の勘やねんけど 
鳥井希ゾム
 時が来るまで出られへんで 
鳥井希ゾム
 その時は、多分呪いの祭りが終わるまで 
天乃呂戊太ロボロ
 ……そうかぁ… 
天乃呂戊太ロボロ
 長い間お留守番っちゅうわけやな 
鳥井希ゾム
 そうやな
まぁ、俺が出られるかどうかはわからへんけど

そのつぶやきはロボロには届かなかった。

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