初めは何も見えない真っ暗な空間だった
だけどある日、声が聞こえた。
気のせいだったんじゃないかと耳を疑ったが、紛れもない絵斗の声だった。
それから俺は、体と魂が分離している状態だということも察した。
この真っ暗だった空間に、俺はまたいる。
夢を叶えるために偶像の力を使ったのに
その先でこの力に飲まれてしまっては意味がないではないか。
ふと、俺は過去のことを思い出す。
俺は教師になりたかった。
だけど周りがそれを許してはくれなかった。
教師になるくらいなら政治家になれと祖父に言われ、教師になるといえば周りがもったいないと呟く。
そんな狭くて苦しい空間で過ごしていたら、"逃げたい"と俺が思うのにそう時間はかからなかった。
小学生4年の頃、俺は絵斗に初めて話しかけた。
あまりにも絵斗が、鏡で見る俺の顔と同じ顔をしていたから。
生きるのが辛いけど
それを隠して生きなきゃいけないから
空元気を振りまいて
今にも死にたいのに
それを隠そうとしてるのに
____隠しきれない。
2人きりの空間で、俺たちは秘密の契約を交わした
ここは……どこだろうか?
そんな疑問を抱いても、誰も答えてくれやしない。
頭ではわかっている。
俺は呪いに飲まれた。
負けたんだ、心が……。
そうやってイライラして
自ら願って消し去った記憶を惜しんで
どうしてあのとき、あんな願い事をしてしまったんだろう
一時の辛さと怒りに身を任せて
この世の全てから俺を消し去って欲しいと
……俺が偶像に捧げた願いは、
"この世の全ての人間から俺に関する記憶を消し去って、
俺を教師にして欲しい"
誰も俺のことを知らずに
猿山家の血を継いだ人間だとは思わずに
俺を見て欲しかっただけなんだ
あぁ、この世界は本当に
愛らしいな
鳥井希視点
首切られたなー
一時リタイアとはいっても、ここから帰ってこられるかどうかは怪しい。
なにせ呪いの祭りに血を捧げてしまったから……。
まさか聞かれているとは思わなかった
と、いうよりここに俺以外の誰かがいるとは思わなかった。
そういって俺は辺りを見回す。
ここは俺とロボロ以外誰もいない2人きりの空間だ。
周りには草原が広がっているが、何せ2人しかいないので少し寂れた空間になっている。
ギラギラと輝く太陽が、俺たちを照らしている。
そうロボロは猿が寝ている木を指さし、またくるっと俺を見る。
そこまで言われて、気づく。
そういや俺、刑事さんにその事言ったな?
……なんで忘れてたんやろか
そのつぶやきはロボロには届かなかった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!