第27話

#.27 オオカムヅミの加護
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2026/02/20 09:00 更新


おい……!猿……!!!


近くから、大きな声で俺のことを呼ぶ声が聞こえる。


…あれ…おかしいな…こんなところにアイツゾムは居ないはずなのに……。


ゆっくりと意識が覚醒し、俺を呼ぶ声もまた大きくなる。

…なんだか、長い眠りだった気もするなぁ
ずーっと、絵斗に憑いたり、鬼の俺を止めたりしてたからかなぁ
猿山 らだ男らっだぁ
 …あ"……? 
鳥井 希ゾム
 あぁ、やぁっと起きた 
お前起きんの遅いねん
ぺしっと軽く頭を叩かれる。
猿山 らだ男らっだぁ
 い"て"ッ…
……はぁ、なんでお前が?

まだヒリヒリと少しだけ痛む頭を抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。


ふらっと体がよろめき、転けそうになったところをゾムが支えてくれた。
……歩くのも久々だったからだろうか


体をここで動かすのが久々だったからだろうか
鳥井 希ゾム
 っとと…危ないやっちゃなぁ…
……なんや、足痺れてんのか?
猿山 らだ男らっだぁ
 あー…うん?
そうみたい、ずっと寝てたから…ここで。
天乃呂戊太ロボロ
 なぁ、なんで起きへんかったん? 
猿山 らだ男らっだぁ
 え〜なんでだろうなぁ 

目上の人には敬語を使いなさい、と教えたのにも関わらず、この2人は一向に敬語を使ってくる気配がない。
なぜだかもう全くと言っていいほど言うことを聞いてくれないので、俺も諦めつつあるのだ。
猿山 らだ男らっだぁ
 ただ眠り深かっただけなんじゃ… 
とりあえず、適当に理由をつけて交わそう
天乃呂戊太ロボロ
 そーなんかぁ……
って言って交わせるほど俺らアホちゃうで
天乃呂戊太ロボロ
 まあ別に深いことは聞きはせえへんけど 
 
そう言ってロボロは深く目を閉じ、己の思考をよりクリアにしようとしているのか腕を組んでいる。
鳥井 希ゾム
 おい、猿 
猿山 らだ男らっだぁ
 ん〜…? 
鳥井 希ゾム
 俺の予想が当たっとったら、なんやけど 
鳥井 希ゾム
 偶像を使ってまで、
ロボロを助けた訳はなんや?
猿山 らだ男らっだぁ
 ん~…ただのエゴかな 
鳥井 希ゾム
 ……あー、そういう……。

あの日、ロボロのお兄さんが死んだと知った日。
それを絵斗だとは思わなかった。


この世の全てから俺の記憶を消して、幸せに教師として生きようとはしても、絵斗のことを簡単には忘れられなかった。
……しかも、久しぶり、の挨拶もなしに死んでしまったことだけを知るなんて、到底耐えられるものじゃなかった。



だから、あの日偶像を使って絵斗を助けたロボロの呪いを、俺が引き受けた。
まだ小学生なのだ。ロボロは。
呪いに巻き込んでいいはずがない。
鳥井 希ゾム
 猿山は隠し事が好きなんやな♪ 
猿山 らだ男らっだぁ
 な…… 

ほんとにこのコイツ、どこまで俺のことを見透かしているつもりなのか
猿山 らだ男らっだぁ
 …もう俺、全部背負っちゃっても
いいかなーって…そう思っただけ。
猿山 らだ男らっだぁ
 誰かと一緒に苦しむより、俺だけが…
苦しめばいい話だって、わかってるから
俺は自分が不幸な思いをしているから、お前も不幸な思いをしろという考え方をする人間が大嫌いだった。
どうして人は、一緒に幸せになるのではなく、共に不幸になりたがるのか。
鳥井 希ゾム
 ふーん。
本心っぽいなぁ
猿山 らだ男らっだぁ
 もう隠し事はしないよ 
鳥井 希ゾム
 へぇ……
じゃあ、まあええか。ロボロ?
天乃呂戊太ロボロ
 ん、なんや 
鳥井 希ゾム
 今から俺が言うこと、
一緒にやってくれへん?
天乃呂戊太ロボロ
 ……おう 

そういうとゾムとロボロは、少し俺から離れた位置で何かをこそこそとやっている。
ゾムの手の形を見ていれば、それがなにかはすぐ分かってしまった。


……俺をここから出そうとしているんだ。
鳥井 希ゾム
 …賢い猿ならもう分かったよな 
天乃呂戊太ロボロ
 ……ゾム、お前…これやったら…… 
鳥井 希ゾム
 ええんや、……ロボロ。やるで 
猿山 らだ男らっだぁ
 …俺、絶対二人を助けてやるから 
こんなとこで終わらせたりなんてさせない
鳥井 希ゾム
 そうじゃなきゃここから
出す儀式なんてせえへんって、なぁ?
天乃呂戊太ロボロ
 ほんまやぞ…… 
頼むで、猿山先生
天乃呂戊太ロボロ
 ……絵斗兄さんを助けてくれ 
猿山 らだ男らっだぁ
 …任せて。
絵斗も、あっちのロボロも全部…救うから

それで、全部終わって


この呪いが全部なくなったら
猿山 らだ男らっだぁ
 …一緒に飯いこうな 
鳥井 希ゾム
 自爆宣言あざっす 
猿山 らだ男らっだぁ
 やっぱやめようかなゾムと飯行くの 
鳥井 希ゾム
 冗談ですやん…
…ほら、早く行ってきーや
天乃呂戊太ロボロ
 ……ん、ほら 

ロボロが俺の胸に拳を当て、ゾムはその拳に手を重ねる。
せーの、と息を吸って力強く俺のことを押して、呟いた。
天乃呂戊太ロボロ
 あなたらだ男に___ 
鳥井 希ゾム
 __オオカムヅミの加護がありますように 

その瞬間、俺の視界は桃色に光り輝いた。

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