おい……!猿……!!!
近くから、大きな声で俺のことを呼ぶ声が聞こえる。
…あれ…おかしいな…こんなところにアイツは居ないはずなのに……。
ゆっくりと意識が覚醒し、俺を呼ぶ声もまた大きくなる。
…なんだか、長い眠りだった気もするなぁ
ずーっと、絵斗に憑いたり、鬼の俺を止めたりしてたからかなぁ
ぺしっと軽く頭を叩かれる。
まだヒリヒリと少しだけ痛む頭を抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。
ふらっと体がよろめき、転けそうになったところをゾムが支えてくれた。
……歩くのも久々だったからだろうか
体をここで動かすのが久々だったからだろうか
目上の人には敬語を使いなさい、と教えたのにも関わらず、この2人は一向に敬語を使ってくる気配がない。
なぜだかもう全くと言っていいほど言うことを聞いてくれないので、俺も諦めつつあるのだ。
とりあえず、適当に理由をつけて交わそう
そう言ってロボロは深く目を閉じ、己の思考をよりクリアにしようとしているのか腕を組んでいる。
あの日、ロボロのお兄さんが死んだと知った日。
それを絵斗だとは思わなかった。
この世の全てから俺の記憶を消して、幸せに教師として生きようとはしても、絵斗のことを簡単には忘れられなかった。
……しかも、久しぶり、の挨拶もなしに死んでしまったことだけを知るなんて、到底耐えられるものじゃなかった。
だから、あの日偶像を使って絵斗を助けたロボロの呪いを、俺が引き受けた。
まだ小学生なのだ。ロボロは。
呪いに巻き込んでいいはずがない。
ほんとにこのコイツ、どこまで俺のことを見透かしているつもりなのか
俺は自分が不幸な思いをしているから、お前も不幸な思いをしろという考え方をする人間が大嫌いだった。
どうして人は、一緒に幸せになるのではなく、共に不幸になりたがるのか。
そういうとゾムとロボロは、少し俺から離れた位置で何かをこそこそとやっている。
ゾムの手の形を見ていれば、それがなにかはすぐ分かってしまった。
……俺をここから出そうとしているんだ。
それで、全部終わって
この呪いが全部なくなったら
ロボロが俺の胸に拳を当て、ゾムはその拳に手を重ねる。
せーの、と息を吸って力強く俺のことを押して、呟いた。
その瞬間、俺の視界は桃色に光り輝いた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!