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第103話

エピローグ
16
2025/09/25 08:22 更新
誕生日会、というにはあまりにも規模の大きすぎるパーティーが終わり、私の周囲はすっかり静かになっていた。
ベッドで眠るホープを一瞥すると、私はこっそり外へ飛び出していく。

「……楽しかったなぁ」

こうして、誰かと笑い合って穏やかに過ごせる日が来るなんて、一か月前の私に言っても信じないだろう。

この一ヶ月で、私は大きく変わったのは自覚している。
誰かを殺し、傷つけ。
それでもなりたい者に近づきたいと、無様にもがき続けている。

「お母様、見てる?」

私は、空から見てるか分からないお母様に向かって言葉を投げかける。

「私ね、今日で18歳になったんだよ。
 もう成人して、お母様と同じ大人になったんだよ」

もちろんの事だが、返事は決して返ってくることはない。
それでも私は誰かに伝えたくて、誰もいない歩道をゆっくり歩いた。

「ちょっと前は、死ぬのもそんなに怖くなくて…。…むしろ、お母様と同じところに行けるなら、本望だって思ってた」

「でもね」と言葉を続けては、空を見上げる。
街灯で照らされた空には、あまり星が見えない。
ヒカリが星を理由に引っ越してきた訳もよくわかる。

「大切な人ができたの。
 新しい家族…キョウカっていう子なんだけどね。すっごく明るくて、お花みたいに綺麗なの。
 それに、友達もたくさんできた。ホープとか、一緒にいてあったかい人が増えたの」

そう語ると、二人の笑った顔が呼び起こされ、自然と口角が上がっていく。
しかし、それはすぐに元に戻ってしまう。
寧ろ、始めより少し下がってしまった。

「……死ぬの、怖いなぁ。

 明日、私生きてるのかな。もしかしたら、この夜も越せずに死んじゃうかも」

日に日に募っていく、死に対する恐怖心は以前から感じていた。
だが、改めて言葉にしてみると、不安で押し潰されそうになってしまう。
思わず止めてしまった足を見つめ、これ以上前には進めないと察した私は、歩道の端っこにあるベンチに腰掛けた。

「せめて、死ぬなら…約束を果たしてからがいいな」


『ねぇ、ユキ。お願いがあるの。

 もう…終わらせてほしいの。この連鎖を。

 …大丈夫よ、泣かないで。

 口の中にある私の魂を飲み込めば、きっとユキは生きていけるわ。

 私が保証する。

 だから……早く、私を食べて』



「………お母様のいじわる」

私は膝を抱え、顔を体と足の隙間に埋める。
呪いのように頭に染み込んだ、お母様の最期。
胸から垂れる大量の血に、焦点すら合わない瞳。
それでも、私の口と手を押さえる手の力は誰より強くて。
最期まで、お母様は苦しそうな泣き顔を私に見せなかった。

強くて、いじわるで。でも優しいお母様。
そんなお母様が、私はずっと大好きで1番尊敬している。
私のなりたい大人の姿だ。

そのためには、もう一歩進まないといけない。

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