誕生日会、というにはあまりにも規模の大きすぎるパーティーが終わり、私の周囲はすっかり静かになっていた。
ベッドで眠るホープを一瞥すると、私はこっそり外へ飛び出していく。
「……楽しかったなぁ」
こうして、誰かと笑い合って穏やかに過ごせる日が来るなんて、一か月前の私に言っても信じないだろう。
この一ヶ月で、私は大きく変わったのは自覚している。
誰かを殺し、傷つけ。
それでもなりたい者に近づきたいと、無様にもがき続けている。
「お母様、見てる?」
私は、空から見てるか分からないお母様に向かって言葉を投げかける。
「私ね、今日で18歳になったんだよ。
もう成人して、お母様と同じ大人になったんだよ」
もちろんの事だが、返事は決して返ってくることはない。
それでも私は誰かに伝えたくて、誰もいない歩道をゆっくり歩いた。
「ちょっと前は、死ぬのもそんなに怖くなくて…。…むしろ、お母様と同じところに行けるなら、本望だって思ってた」
「でもね」と言葉を続けては、空を見上げる。
街灯で照らされた空には、あまり星が見えない。
ヒカリが星を理由に引っ越してきた訳もよくわかる。
「大切な人ができたの。
新しい家族…キョウカっていう子なんだけどね。すっごく明るくて、お花みたいに綺麗なの。
それに、友達もたくさんできた。ホープとか、一緒にいてあったかい人が増えたの」
そう語ると、二人の笑った顔が呼び起こされ、自然と口角が上がっていく。
しかし、それはすぐに元に戻ってしまう。
寧ろ、始めより少し下がってしまった。
「……死ぬの、怖いなぁ。
明日、私生きてるのかな。もしかしたら、この夜も越せずに死んじゃうかも」
日に日に募っていく、死に対する恐怖心は以前から感じていた。
だが、改めて言葉にしてみると、不安で押し潰されそうになってしまう。
思わず止めてしまった足を見つめ、これ以上前には進めないと察した私は、歩道の端っこにあるベンチに腰掛けた。
「せめて、死ぬなら…約束を果たしてからがいいな」
『ねぇ、ユキ。お願いがあるの。
もう…終わらせてほしいの。この連鎖を。
…大丈夫よ、泣かないで。
口の中にある私の魂を飲み込めば、きっとユキは生きていけるわ。
私が保証する。
だから……早く、私を食べて』
「………お母様のいじわる」
私は膝を抱え、顔を体と足の隙間に埋める。
呪いのように頭に染み込んだ、お母様の最期。
胸から垂れる大量の血に、焦点すら合わない瞳。
それでも、私の口と手を押さえる手の力は誰より強くて。
最期まで、お母様は苦しそうな泣き顔を私に見せなかった。
強くて、いじわるで。でも優しいお母様。
そんなお母様が、私はずっと大好きで1番尊敬している。
私のなりたい大人の姿だ。
そのためには、もう一歩進まないといけない。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。