実は中島、江戸川が探偵社を出る前に1つ、
言われたことが有るのだ。
「今からくる依頼人の依頼は絶対受けてね」
太宰が乱歩さんという単語を出し、
中島はふと、此の事を思い出したのだった。
中島がそう云うと、萩野は目を見開いた。
頼んでおいて失礼な話だが、引き受けて貰えるとは
毛程も思っていなかったのだ。
嬉しさを噛み締め乍ら、
右手に握り締めていた貨幣を机に出す。
中島は其れを受け取り、また部屋を出て行った。
まだ心臓が煩い程脈打っているのが聞こえる。
勢いで家を飛び出し、只管に此処まで歩いて来た。
その努力が叶ったのだ。
胸が締め付けられる様な、
目頭が熱くなる様な感覚を覚えた。
ショートヘアの女性が部屋に顔を覗かせて云った。
萩野は座った姿勢で頭を下げる。
与謝野は萩野の前のソファに腰掛ける。
与謝野は目を丸くした。
基本、荒事を担当する探偵社。
こんな愛らしい依頼を引き受ける日が来るとは、
と驚いていた。
其れと同時に、ふっと微笑んだ。
与謝野はそう云うと、
手招きをして探偵社内の案内をした。
そして、探偵社員の出入りが一番多い
仕事机の置かれた部屋に戻った。
時間を掛けて回ったので、随分と時間が過ぎた。
バンッと開かれた扉。
音と声の元へ顔を向ければ、
背の高い包帯を巻いた男性が笑顔で立っていた。
因みに時刻は十二時を回ろうとしている。
当然、朝ではないのだが...
そう云うと、
包帯男は片膝をつき萩野の目線に合わせる。
萩野は会釈をした。
すると太宰は立ち上がり、萩野の右手を取り
先刻太宰がこの部屋に入った扉へ向かう。
萩野は困惑し乍らも、掴まれた手を
振り払う事など到底できず、太宰の云う うずまき に
連れて行かれる事となった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。