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第1話

第一話 . 小さな依頼人
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2026/02/28 11:58 更新


顔を下に向けて、右手に紙幣を握り、
とぼとぼと大通りを歩く。

彼女の名前は萩野あなたの下の名前。6人兄弟の長女である。

自分の足元しか見えていない視界に、
前から来た人であろう足が映る。
ドンッと音が鳴った。ぶつかったのだ。

あなた
ぁ、
︎︎
ごめんねー


謝ろうと前を向く。
急いでいたのだろう、声の出処に顔を向けた時には、
既に彼は居なくなっていた。
其れから数分もしない内に、ビルに着いた。
萩野の目的である2階に到着した。

︎︎
どうされましたか?


斜め切りされた前髪の青年は、萩野に声を掛ける。

あなた
探偵社に依頼があって、
来たんですけど...
︎︎
依頼人でしたか!案内しますね!


笑顔が眩しい白髪の青年は部屋に案内した。
仕切られた部屋に、
机と椅子が申し訳程度に置かれている。

中島敦
僕は中島敦です、お名前は?
あなた
萩野あなたの下の名前です
中島敦
依頼はなんでしょう?


1呼吸置いて、萩野は云った。
自分でも判る程震えていた。
あなた
1週間、甘えてみたいんです


中島は目を丸くした。
なんて言ったって、そんな依頼は初めてだからだ。

あなた
お金は有ります、
探偵社で過ごしたいんです...
中島敦
な、何故探偵社に...?


中島は困惑した。
知り合いがいるのか?
覚えていないだけで、知り合いなのか?
甘えてみたい?
なぜそんなことのために探偵社に来たんだ?
言いたいことが山程頭に浮かんだ。

あなた
何でも解決してくれる
って聞いた、ので
あなた
ちゃんと払います!だから...
中島敦
一寸待っててください!


中島は部屋を後にした。
どう如何すれば善いのか判らなかったからだ。
取り敢えず1番上に有った電話番号に電話を掛けた。

太宰治
やぁ、敦くんから電話なんて珍しいねぇ
中島敦
つい先程来た依頼人さんが
1週間探偵社で過ごしたい、
と言っていて...
中島敦
善いんでしょうか?
太宰治
私からは何も言えないねー
乱歩さんに聞いてみたら確実だと思うよ
中島敦
解りました!
太宰治
まぁ頑張り給え、敦くん!
中島敦
太宰さんは早く探偵社に
帰ってきてください?
太宰治
いやぁ、私は心中相手を探すので忙し(


太宰の話す途中で電話を切り、
溜息をつきながら依頼人のいる部屋へ戻った。

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