顔を下に向けて、右手に紙幣を握り、
とぼとぼと大通りを歩く。
彼女の名前は萩野あなたの下の名前。6人兄弟の長女である。
自分の足元しか見えていない視界に、
前から来た人であろう足が映る。
ドンッと音が鳴った。ぶつかったのだ。
謝ろうと前を向く。
急いでいたのだろう、声の出処に顔を向けた時には、
既に彼は居なくなっていた。
其れから数分もしない内に、ビルに着いた。
萩野の目的である2階に到着した。
斜め切りされた前髪の青年は、萩野に声を掛ける。
笑顔が眩しい白髪の青年は部屋に案内した。
仕切られた部屋に、
机と椅子が申し訳程度に置かれている。
1呼吸置いて、萩野は云った。
自分でも判る程震えていた。
中島は目を丸くした。
なんて言ったって、そんな依頼は初めてだからだ。
中島は困惑した。
知り合いがいるのか?
覚えていないだけで、知り合いなのか?
甘えてみたい?
なぜそんなことのために探偵社に来たんだ?
言いたいことが山程頭に浮かんだ。
中島は部屋を後にした。
どう如何すれば善いのか判らなかったからだ。
取り敢えず1番上に有った電話番号に電話を掛けた。
太宰の話す途中で電話を切り、
溜息をつきながら依頼人のいる部屋へ戻った。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。