第11話

人を救う言葉
112
2024/04/19 12:57
五条 あなた
…先ほどとは全く表情が違いますね
五条 あなた
それでも熱は使わないと
轟 焦凍
…!
五条 あなた
まだ迷っているんでしょう?
五条 あなた
自分の嫌いな自分を受け入れるのが怖いから
轟 焦凍
黙れ
五条 あなた
生きる目的が無くなりそうで不安だから
轟 焦凍
黙れ…!
五条 あなた
自分を呪っていたのは本当は自分自身だと気づいてしまったから
轟 焦凍
っうるせえ!
五条 あなた
…っ





また氷結
やっぱり熱は出してこない
でもこれぐらいなら術式を使うまでもなく避けられる




轟 焦凍
…分かってんだよ
五条 あなた
…!
轟 焦凍
けど
轟 焦凍
分かんねぇんだよ
轟 焦凍
どうすりゃ良いのか
五条 あなた





何をしても五条悟の劣化版でしか無い自分を
受け入れるのは怖かった
五条悟を追いかけるという生きる目的が
無くなってしまいそうで不安だった
自分ではない誰かに呪われていると思っていた自分を呪っていたのは
自分自身だということに気づいてしまった





____お前は俺じゃねぇだろ




この言葉を聞いてから




五条 あなた
どれだけ氷を出そうと同じです
五条 あなた
その程度の攻撃では私の個性を使うまでもない
轟 焦凍
使えってか?左を
五条 あなた
いいえ
五条 あなた
あなたでは一番になれないということです
轟 焦凍
…っ





私思ったんです
教室に入ってあなたを見た時
誰かに似ているって
それが誰なのかはまだ分からない
だけど
助けを求めるようなその背中は
生きる意味が分からなくて
どうして生まれてしまったのかと涙して
最強の背中をただ追いかけることしかできなかった
あの時の私にそっくりだった




五条 あなた
…私はずっと
五条 あなた
優秀な兄と比べられて
五条 あなた
二番手だと言われ続けて
五条 あなた
辛くて苦しい思いをして生きてきました
轟 焦凍
五条 あなた
でも兄は
五条 あなた
私は自分ではないと言いました
五条 あなた
好きに生きればいいと言ってくれました
五条 あなた
それで気づいたんです
五条 あなた
私を優秀な兄と比べていたのも
五条 あなた
二番手だと言い続けたのも
五条 あなた
辛くて苦しい思いをさせたのも
五条 あなた
私だった
轟 焦凍
…何の話がしてぇんだ
五条 あなた
あなたの話です
轟 焦凍





飄風操術




五条 あなた
"鬼灯"
轟 焦凍
…っ
轟 焦凍
斬撃っ…そういや出せるっつってたな
五条 あなた
緑谷さんと戦って
五条 あなた
あなたも気づいたはずです
五条 あなた
エンデヴァーに向けていたはずの憎悪を
五条 あなた
いつの間にか自分の左側に向けてしまっていたこと
轟 焦凍
俺は親父を…
五条 あなた
あなたはエンデヴァーではありません
轟 焦凍
…!





私は五条悟じゃない
あなたもエンデヴァーじゃない
そして私とあなたもまた違う
五条悟のいる世界で生きるのは辛かった
だから兄さんは私を逃がしてくれた
あなただって本気でエンデヴァーを否定したいのなら
エンデヴァーの選んだヒーローを辿る必要はない
それなのに必死になってその道を進むのは
あなたの追いかける先に
エンデヴァーではない誰か憧れがいるからなんでしょう?
進みたい道なりたい自分があるからなんでしょう?




五条 あなた
教えてください
五条 あなた
あなたがヒーローを志す理由はなんですか?
五条 あなた
あなたの追いかけている背中は
五条 あなた
誰の背中ですか?
轟 焦凍
…っ
五条 あなた
エンデヴァーですか?
轟 焦凍
違う!
五条 あなた
じゃあどうして
五条 あなた
…いつまで血に支配された人形のフリをするの





私は兄さんのように強くはないから
私が全部なんとかするだとか
私があなたを守るだとか
そんな心強いことは言えないけど





____お前は俺じゃねぇだろ




人を救う言葉はたった一言だ
たった一言だけで人は救われることができる
私が言うべき一言




轟 焦凍
どういう意味だよ…





私思ってたんです
人って憎悪とか嫉妬とか恨みとか
そういう負の感情だけで生きていくのって
すごくしんどいんです
それだけじゃあ視野が狭くなって
自分の歩いている道が他の誰かのものであると思ってしまう
その道の先に誰か憧れがいたとしても
他の誰かのものになるなんてあるわけないのに
狭い視野では分からなくなるんです
自分が誰の選んだ道を歩いているのかが
そう
今のあなたのように




五条 あなた
人を…自分を…
五条 あなた
呪うために生きて…迷って…それでも進んで
五条 あなた
その末に待っているのは暗闇だけです
轟 焦凍
五条 あなた
あなたはなりたい自分になるために生きてください
五条 あなた
あなたは本当は何にも支配されてはいないもの
轟 焦凍
俺はお母さんを…親父を…
五条 あなた
だって
五条 あなた
あなたが今歩いている道はあなたが選んだ道だから
轟 焦凍
五条 あなた
なりたいものになるために
五条 あなた
あなたはずっと
五条 あなた
あなた自身で道を選んできたはずです





なりたいものになりたいから
あなたはヒーロー憧れたものを目指した
あなたはエンデヴァー他人の選んだ道を拒んだ
あなたはここ雄英に来た
全てあなたが選んだ道だ




轟 焦凍
轟 焦凍
ああ
轟 焦凍
…そうだな
五条 あなた
…!
五条 あなた
炎…





緑谷さんの時とは違う
今度は迷いの無い炎




轟 焦凍
フッ
五条 あなた
え…?





なんで消すの?




轟 焦凍
五条 あなた
どうし…
轟 焦凍
まいった
五条 あなた





え?




ミッドナイト
…と、轟くん降参
ミッドナイト
五条さん決勝戦進出!
轟 焦凍
五条 あなた
…ぇ
五条 あなた
え!?あの!轟さん!?
轟 焦凍
なんだ
五条 あなた
いや…え!?
五条 あなた
どうして降参なんか…
轟 焦凍
お前が言ったんだろ
轟 焦凍
俺じゃ一番になれないって
五条 あなた
あ…いやそは…!
五条 あなた
半分だけの轟さんではという意味で…!
轟 焦凍
…どっちにしろ
轟 焦凍
今の俺じゃお前に勝てねぇ
轟 焦凍
自分の歩いてる道を誰が選んできたのかも分からなかった俺には
五条 あなた
轟 焦凍
ありがとな五条
五条 あなた
…?
轟 焦凍
轟 焦凍
自分の左側が憎くて
轟 焦凍
日の本を歩くのが怖かったんだ





わかる
自分の存在を自分で否定してしまうと
誰の目にも映りたくなくなるんだ




轟 焦凍
だけど五条のおかげでもう迷いはなくなった
轟 焦凍
でも
轟 焦凍
俺だけが吹っ切れて終わりじゃ駄目だ
轟 焦凍
俺の道はきっとこれから多くのものを拾い戻る道になる
轟 焦凍
時間はかかるかもしれねぇ
轟 焦凍
けど必ずお前に追いついてみせる
轟 焦凍
そしたら今度は俺がお前に勝つ
轟 焦凍
この負けはその時までの戒めだ
五条 あなた





轟さんの背中はもう
助けられた人の背中だ




轟 焦凍
俺もお前のように胸を張ってヒーローを目指したい
五条 あなた
五条 あなた
轟さんならきっと前に進めます
轟 焦凍
ああ
五条 あなた





私はあなたの英雄になれただろうか
私はあなたの心を救えただろうか
そんなことは聞くまでもなかった
あなたの背を見れば分かる




五条 あなた
五条 あなた
私のように胸を張って…ですか





あなたはきっとそれができるのでしょう
前に進めないのはいつだって私一人だけだもの



ゆらぎ
ゆらぎ
良い感じなようなちょっと物足りないような
ゆらぎ
ゆらぎ
でも私の全力です
ゆらぎ
ゆらぎ
そういえば術式の説明をしていませんでした





【飄風操術】
風を操る術式

"鬼灯ほおずき"
斬撃を繰り出す

"石楠花しゃくなげ"
竜巻を起こす




ゆらぎ
ゆらぎ
こんなもんです
ゆらぎ
ゆらぎ
"鬼灯"と"石楠花"は赤血操術で言う穿血みたいなもん
ゆらぎ
ゆらぎ
技っすよ技
ゆらぎ
ゆらぎ
呪力それなりに食います
ゆらぎ
ゆらぎ
では次回お会いしましょう

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