諸伏の話を軽くまとめると、つまりはこう。
15年前、両親と夕飯を食べている時に来客があった。
その人は諸伏の父と知り合いらしく、玄関先で話していたが、しばらくして来客の声は穏やかではなくなった。
諸伏母が様子を見に行った矢先に呻き声が聞こえ、血相を変えて戻ってきた諸伏母は諸伏を押し入れに隠した。
そのうち諸伏母の声も聞こえなくなったらしく、代わりに聞こえてきたのは甲高い猫なで声の歌。
諸伏が恐る恐る押し入れの隙間から顔を少し覗かせると、血に染った包丁を手にした男が口ずさんでいたらしい。
かくれんぼの時に鬼が歌うあの『もういいよ〜出ておいで〜』というリズムを繰り返し。
しかし、その男が捜していたのは諸伏ではなく、当時諸伏と仲が良かった女の子だった。
事件のショックで失声症と軽い記憶喪失になった諸伏。
なぜその男が諸伏の家に来て少女を捜していたのか、なぜ母親が閉じ込めたはずの押し入れに隙間があったのか。
その謎は、諸伏の話を聞かない限り解決しないだろう。
俯いていた諸伏が、ふと顔を上げて言った。
諸伏の話を聞いていて、蓄積された感情に目を逸らしきれなくなり、床に向かってポツリと呟いてしまった。
今抱く感情としては、場違いにも程がある。
どうしてこんなことを言ってしまったんだろう。
戸惑いと困惑が入り交じった空気が流れている。
ありがたいことに、松田が話を戻してくれた。
松田は「なぁ?」と他3人に同意を求める。
そこまで私が踏み入る権利なんてないと、自分で勝手に判断して、理由も言わずに断った。
言えば、そんなの関係ない、なんて言ってくれるかもしれなかったけれど。
今更、断らなければ良かったという後悔の念が押し寄せてくる。
何もかも、私は遅いんだ。
そう言いながら、ポケットから手帳を取り出す。
でも、なんだろう。
どこか妙に引っかかる。
なんだ、なんなんだ。
情報が増えれば増えるほど、靄がかっていく気がする。
進めば進むほど霧が濃くなっていく森のように。
今は、床にこびり付いた泥の汚れなんかよりも、このモヤモヤで頭がいっぱいだった。

ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!m(*_ _)m













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。