昔から、人の話を聞くのが好きだった。
今日は友達とくたくたになるまで遊んだとか、お小遣いが貰えたとか、好きな人に挨拶ができたとか、仕事が上手くいったとか…
逆に、友達と喧嘩したとか、大切にしてたお財布を落としたとか、好きな人にフラれたとか、仕事で失敗したとか…
そんな良い話も、かなしい話も、全部聞いていた。人の話を聞くのが好きだった。
昨日とびきり嬉しいことがあってはしゃぎ回っていたあの子は、今日は泣くほどかなしいことがあったらしい。
反対に、昨日ずっと膝を抱えて落ち込んでいたあの子は、今日は顔を上げて大きく口を開けて笑っていたらしい。
やまない雨はないとか、雨降って地固まるとか、そういう言葉を思い出して、不思議なものだなあ、と物思いにふける時間すら好きで。
そして決まって、同じことを言われる。
『想いを届けてくれて、ありがとう』
私は笑って、
『こちらこそ』
次の仕事があるからと手を振り、その場を離れて飛んでいく。
幸せだなぁ、と思う。
よかったなぁ、と思う。
この仕事が好きだ。
人の話を聞くのが好きだ。
話が日によって変わるのが好きだ。
涙が笑顔に変わるのが好きだ。
必要とされて、認められているのが好きだ。
人のために飛びたい。
誰かのために飛びたい。
このどこまでも青く澄み渡る空は、みんなの想いを繋いで私に届けさせてくれる。
だから私は飛べる。飛びたいと思える。
話を聞いて、相槌を打って、たまには大好物のポップコーンを食べて、芝生の上の木漏れ日に寝転んで。
それがずっと幸せで、続けばいいなぁ、とぼんやり思っていた。
誰かとこの気持ちを共有してみたいな、と遠くを見つめながら。
──ね、私のお話、聞いてくれる?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。