辰哉side
トントン
照「お風呂、沸いたよ」
翔太と大介の家から帰ってきて少し、どうやらうたた寝をしていたみたい。
照に肩を叩かれて、意識が浮上した。
起きてすぐ目に入ったのは、やっぱり大好きな照で。
優しすぎる笑顔とついさっきのように感じる照の温もりと匂いに、頬が染まる。
辰哉「ありがと」
辰哉「いってくる」
あまり顔を見せないようにと、コソコソとバスルームへ。
辰哉「っは……」
辰哉「かっこよかった……」
準備してあるおそろいのパジャマを抱きしめながら見た鏡には、
頬と言わず顔面が真っ赤になった俺がいた。
出会って数年、確実の照への好きは大きくなっていくばかり。
照「辰哉さんが好きです」
思い出しては照れてしまう、あの日の照の言葉。
あの時のあいつに負けないくらい大好きで、大好きで…
辰哉「やっぱり大好きなんだよなぁ…」
思わず漏れたのは、長い間出さないようにと思っていた声。
照と出会ってからは、なんだか俺の声に耳を傾けてくれる人がいることに安心して。
自分に聞こえなくても声に言葉を乗せられるようになった。
辰哉「ふぅ……」
あったかい湯に浸かって、体も頭も顔も洗って、ちょっぴりケアもして。
再度見つめた鏡に映る俺は、ちょっとだけ。
ほんとにちょっとだけね?
大好きな人のために可愛くなれる女の子の気持ちがわかるほどに。
可愛いな。なんて、思ってしまうような表情をしていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。