第27話

26
1,160
2024/05/29 12:01

照side










康二「照くんやったんよね?辰哉くんのハンカチ拾ってくれたん」



照「まぁ、はい」





子犬って表現がピッタリなんじゃないかってくらいのキュルキュルした瞳。



康二「すごい楽しそうに照くんのこと話してくれてんで!」

康二「それが最近なぁ……」






カフェラテを飲み切ったのか、カップを手にゴミ箱の方へ立って行った康二さん。

悲しそうに笑ったあとに、




康二「すっごい寂しそうなんよ」

康二「理由はわかってるんやけどね…笑」




そう続けた。







ちょっとした緊張感が漂って、ごくりと唾を飲み込んだ。







もしかして、最近会えないのが理由だったりする?

それともやっぱり、俺のことが嫌でとか?







康二「そんな悲しい顔せんとってよ笑笑」



少し眉間に皺が寄っていたのか、優しく頭を撫でられた。



しないでって言ってもさ……








照「俺のことが嫌になったとか、そういうことですかね…笑」

照「俺が好きなの気づいてて、嫌いになっちゃったとか………」




康二さんの手があったかくて、心地よくて。

じんわりと視界が滲んできたと思ったら、自分の口から出た声はどれも弱々しかった。






思わず俯いて、涙を堪える。












康二「っあ!ちょ、たんま!!」


康二「何もしてへんて!!許してぇ!!」







いきなり頭上で響いた、焦った康二さんの声。

涙のことなんて忘れて顔を上げてみれば、




辰哉「大丈夫?」




怒っているのか眉間に皺に寄った辰哉さんがいた。







辰哉「康二に何かされた?」

辰哉「泣かされたの?ごめん、俺が離れたから…」




素早く手が動いて、捲し上げるように言葉が紡がれる。



照「えっと……」





少し言葉に詰まったところで、「ごめん…」と辰哉さんが離れていった。







照「ぃや、そんなんじゃなくて!、」

照「ふぅ………」







悲しそうに下唇を噛み締めた辰哉さんの手を、捕まえる。




言うためには、しっかりと心を落ち着かせて。







深呼吸の後に言わなきゃいけないのは、ただ一つだ。














照「辰哉さん、」





照「伝えたいことがあります」














プリ小説オーディオドラマ