第22話

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2024/05/03 11:55

辰哉side











照「ありがとう!!」




すごく眩しい笑顔で、やっぱり大好きな笑顔で、
恋なんてするもんじゃないと改めて実感した。





辰哉「頑張って、」



ガッツのポーズをして見せるけど、側から見れば元気のない感じで変なんだろうな。

照くんは、ありがとうと何度もお礼を伝えてくれるけれど、俺はそれどころじゃなかった。





なんでかすごく心がじくじくと痛んで、苦しい。

照くんの笑顔を見れば無性に涙が溢れそうになるから、もう目を背けることにした。




諦めなきゃいけない初恋を抱えたまま、俺は君と一緒に笑えないな…なんて思いながら。






辰哉「いつ、伝えてあげるの?」


照「早く伝えたいんだけど、まだダメなんだ」



あぁ、苦しんでおきながら自分で傷口に塩を塗ってる。





辰哉「そぉなんだ、」




辰哉「早く伝えてあげればいいんじゃない?」






そしてそのまま、早かったと言って繋がることも無く終わればいいのに。












照「俺も、早く伝えたくてしょうがない…」




照「でも相手の思いを尊重したいでしょ?」

照「早いよ、ごめん。とか言われちゃったら、嫌なんだ」




こんなウジウジしてる俺と違って、彼は大人だ。





好きな人の不幸を願っている時点で、俺はもうダメなやつ。















辰哉「俺も…伝えればよかったのかな……」











思わず手が動いていたこの言葉は、ちょうど照くんも目を離していたみたいで気付かれなかった。


まぁ、照くんのことを肘で突いたりしてる大介くんとはすごく目が合うのだけど。








辰哉「照くんの恋が、うまく、いきますように」





震える手と精一杯の笑顔で、伝えてあげなきゃね。









本当は、俺一目惚れしてたんだ。



君の太陽みたいな笑顔が眩しくて、声をかけてもらった時にはすごく胸があたたかくなった。



まだ耳が聞こえていた頃。その頃に出会えていれば、君の声を聞くことができていたんだろうけど。





想像でしかない照くんの声も、今じゃイメージすら思い出せなくなっている。









こんなこと願っても、無意味だとわかってる。



でも、願うだけ苦しいけれど許してほしい。











辰哉「君の声が、、」



辰哉「照くんの声が、聞きたい…」








何度も何度も自分の耳を憎んだし、聞こえる人間のことを羨んだ。


もう何も変わらないと割り切っていたはずなのに、照くんに出会ってからは全てが辛い。








初恋なんて、しなければよかった。





涙がつぅっと頬を伝ったのにも気づかないふりをして、

そう心の中で呟いてしまったところで。










大介「辰哉さん、、」







軽くて優しい手つきの彼に、肩を叩かれた。












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