クルリとさっき自身が出てきたトイレに目をやる
そう戸惑いながらドアノブから手を離し見慣れない廊下に足を踏み込む
それと同時に自分の後ろからパタンと何かが閉まる音がした
考える間もなく振り返り閉まった扉のドアノブに手を掛け一気に押す
その直後ふッと何かが私の頭の中をよぎった
ほんの少し後悔し始めた時にはもう遅い
その見慣れない扉は『ガチャッ』と大きく音を立てて開いていた
その扉が開いた一瞬に目に飛び込んできたのは
大人数が私の方を見て目を丸くしていた
中には角もつけている人もいた気がする
その光景に驚いて反射的に扉を勢い良く閉める
その直後、扉の奥から大きな声が聞こえた
そう慌てていると扉の奥から『ドドドドッ』と大人数が走ってくる様な音がした
運良く近くに一枚の扉があった
何か壁にプレートがかかっていた様な気がするが今はそんなの確認する余裕なんてない
私は扉を開け、隠れようと部屋一体を瞬時に見渡し角の物陰があるところにうずくまった
その数秒後、扉の奥から声が聞こえてきた
『バタバタッ』と走っていく音が遠のいて行く
そううずくまりながらそう言葉を吐き捨てる
その直後、私がいる部屋から扉の開く音が聞こえた
ビクッと肩が弾む
私は恐怖で何も喋ることができなくなっていた
しかし、何か温かい空気が体を覆った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!