初めて守りたいと思った人物ができた。
そいつはとても小さくて、弱っちぃし、
虚弱体質な上に、呪いの子供だと妨げられている。
でも、声がすっごい綺麗。
呪いの歌声なんて馬鹿なんじゃないのか?
どっからどう聞いても美声やん。綺麗やんか。
瞳だって、鮮やかな躑躅色。
周りの奴らがなんと言おうと美しいと思えた。
所々霞んでるけど、たまに見せるキラキラとした
笑顔が俺は大好きだった。
あとは、すっごい頑張り屋さんなんや。
辛いことも、苦しいことも、悲しいことも。
全部耐えられる程の精神を持っている。
さっきの“うん”だって、本当は無理して
頷いただけなんやろ?
俺に心配を掛けたくないからそうしただけ。
追求しない俺も俺だよな。
必死に耐えてるロボロを見てると胸が苦しくなる。
その必死に考えた言葉を遮るなんて俺には出来ない。
ロボロが壊れるくらいなら、俺が守った方がええやろ?
触ったらバラバラに砕け散ってしまいそうな、
粉々になって消えてしまいそうな気配を見て
いつも怖くなる。恐ろしくなる。
俺が触ったら壊れるんじゃないか。
俺が隣に居るだけでもヒビが入るのでは?
実際はそんなこと無いのはわかっている。
でも、初めてなんやもん。
壊してばかりだった俺が、人生で初めて。
本当に一番に守ってやりたいと思ったから。
加減がわからんくなってもうたんや。
ある日を境に、俺はロボロと離れ離れになった。
いつも遊んでいた林を探しても、
一緒に昼寝をした草原を走り回っても、
隠れ家としていた洞窟野中を探索しても見つからない。
俺はロボロとの距離を間違えてしまった。
離れすぎてしまったんや…
それだけか?本当にそれだけなのか?
忌まわしく思っている村人共が俺のことを
追いかけなくなっていた。
食事だってそこら辺においてあることもあった。
おかしい。こんな事今まであるはずがない。
もしかしてロボロが?
それならどうして姿が見当たらない?
絶対におかしい。ロボロに何かあった…?
そうか………ようやく理解した。
あいつは村人共に捕まったんだ。
最近この村に移住してきた奴が話していた。
歌が綺麗で、瞳が美しい奴は神様の子供なんだと。
それでこいつらはロボロが天使だと思い込んで
どこかへ隠してしまった。
そういうことなんだろ?
散々ロボロのことを鬼扱いして、忌み嫌って、
今度は天使様に仕立て上げるんや?
何なんだよお前らは。意味わからんし…!!
ロボロがどんだけ苦しい思いしたのか知らんやろ!?
それなのに、余計にあいつの傷増やさんでよ!!
絶対に許さない………お前ら全員っ、地獄に落ちろ!!!
で、色々あって先生に引き取られたって感じ。
もちろん最初は警戒しとったで?
でも、そんな危ない奴じゃないなってなった。
ロボロも目が輝いとるし、これだけで俺は十分。
先生には俺らの村のことは話していない。
だって話す必要なんてないやろ?
俺らのいた村は、もう………無いんやからさ。
ありがとな。俺とロボロを引き合わせてくれて。
だからさ、ロボロも俺から離れんといて。
俺の心はお前に撃ち抜かれてもうたから。
その視線は弾丸のごとく………
etc.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。