愛情が欲しかった。
温かい視線で見つめて欲しかった。
いつまでも続いて欲しかった。
愛を知りたかった。
あいを、教えて欲しかった。
アイを、分け与えて欲しかった、だけ…
望んだ所で手に入らないのは目に見えている。
わかってるはずなんだ。理解してるつもりなんだ。
ただ、受け止めたくなかっただけ。
鵜呑みにしたらそこで終わりだと。
否定しなければ、俺の心が危ういのだと。
教えてくれたのは彼だった。
逆に聞く。
これのどこがダメなんや。
これ以上期待を背負わせないでくれ。
俺は誰にも必要とされていない。
出ていったアイツだって、信じていたアイツだって。
全部、壊れてしまったんだ。
俺が望んでしまったから。
なら、使う手は一つだけ。
「心を捨てろ」
いらない感情を全て消し去れ。
そうすれば何も望まなくてすむ。
何も感じないですむ。
喜びも、悲しみも、苦しみも、辛さも全部。
跡形もなく、無くなってしまえば…
あぁ……そうか。そうだったのか。
アイツも俺のことがいらなかったんだ。
ずっと、信じていたかったのに。
愛情はくれなくとも、信じて、いた…?
なにが、正しいのかわからない……
俺は、俺はどうすればいい?
わからない、なにも、考えられない…
なんで、どうして?あいつ、アイツはっ…!!
ごめんな大先生。
咄嗟に口に出た言葉がこれなんよ。
もう何を話せば良いのか、何を伝えれば良いのか。
わからなくなってしまった。
大先生は優しいな。
こんな俺のために、必死に止めてくれて。
でもな、もう止められないんよ。
誰も救いの手を差しのべてくれない。
俺らは、神様から……見捨てられたんや…
無理やって。
誰も助けてくれへんし。
だから無理なんや。
大先生。俺のことはもうええから。
お前だけでも幸せになってくれよ。
頼むから…
俺は、もうええんやって…
そう、子供に出来ることなんて限られてる。
ごめんな大先生。
俺は、まだ……お前と一緒に…
やっと現れてくれた救世主。
お前に俺のことは救えるんか?
ココロに負ってしまった傷は一生を懸けても
消えないような深い傷になってしまった。
それを取り除けるんか?
期待はしない。
もちろん、喜ぶのも、悲しむのも。
自分の感情は全て押し殺せ。
相手に隙を見せるな。
二度とこんな気持ちにならないように。
自分で壊してしまえばいい。
さようなら、ボク
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。