アクション映画の主人公は2人いた。
荒野を馬で駆け回り敵を排する男のうち
片方の名前を出すと彰くんは「へえ」と言った。
ゲイリーはダニエルの相棒で、もう1人の主人公だ。
ベッドサイドに2人もたれて鑑賞中。
いつのまにかマットレスに放り置かれた太い腕が
わたしの後頭部のいい枕になっていた。
肩からだらんと垂れてくる手は時々、
手持ち無沙汰みたいにわたしの髪をいじった。
ぽそっと呟いた横で
聞き間違いを確かめるみたく「へ?」と漏れる声がする。
これは映画だ。
俳優が役を演じているだけで、2時間で物語は終わる。
彼はダニエルだけれど、ずっとダニエルではない。
それはわかってるんだけど、でも。
体が途端に重くなり、ぐっと彼側に寄せられる。
ベッドに置かれてただけの腕が
今度はしっかりわたしの首に回った。
にやにやと口角を上げて、ごきげんそうで、
この人のツボってほんとわかんない。
すりすりと指先がほおをなでてくる。
ん?と覗き込んでくる男に、
もうつきあえばよくない?と煩悩が疼く。
彰くんなら好きになれそうじゃない?
わたしが好意を持てば条件が揃うし、
それはわたしを楽にするんじゃない?
そこまでは思うのに、実行する気にはなれない。
脳裏に別のがちらついて邪魔をしてくる。
わたしを傷つけた男のくせに。
高い体温が離れていくと、
彼がもたれ直した重みでベッドが低く響いた。
パッと目を上げてあったのは、眉を薄く上げた余裕だ。
そうじゃなくて、そっちのなんでじゃなくて。
…あーもう、なんでバレるわけ、この人には。
猫、なんてごまかし見透かされて
恥ずかしくなったけど、そんなことより、
新しい情報に釣られてしまった。
全っ然、平気じゃないんだけど。言えよ。
本音は心の中で留まるだけになった。
今日はもう満身創痍なうえに、
彰くんから事情聴取するのは骨が折れそうだ。
はぐらかされる気しかしない。
粘ってやろうと思うほどの元気も、今はない。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。