第2話

ep . 1
250
2024/05/25 09:17





季節は春。

と言っても桜なんてとっくの前に散ってしまい
今は初夏の始まりを向かえる準備みたく雨の日が多くなってきた頃。








鈴「 今日も雨かよ~ 嫌んなっちゃうね 」








雑誌撮影で、久しぶりに会えた俺のシンメは 今日の雨にご機嫌ナナメみたい。

… 俺は、雨でも風でもあなたに会えるなら最高な気分なのに。








佐「 あなた 雨嫌いなの? 」





鈴「 なんか空も暗いと気分暗くなるじゃん? 」





佐「 ふーん 」





鈴「 反応薄すぎるのやめてもらっていい?笑 」








「勝利から話題始めたんじゃん笑」と多分何の意味も無い笑顔を見せながら結ばれた髪の毛先を触るあなた。
その一瞬の行動にさえドキッとする。

丁寧に編み込み綺麗に巻かれた耳下のツインテール。
ライブとか歌番組とか、撮影の時とか、仕事じゃないと見れない完璧なアイドル姿でいつもの笑みを浮かべるあなたに思わず見蕩れてしまって。


はあ、せっかく2人きりでの仕事なのに。
今朝は「あなたに会える…!」と浮かれていたくせに、
いざ会うとやっぱり片思いを痛感して苦しくなってしまう。








鈴「 てか勝利ひさしぶりだね 」





佐「 そうだよ、全然会えてなかった 」





鈴「 暇な時連絡いれてくれたらよかったのに 」





佐「 …… いれてもあなたは忙しいじゃん 」





鈴「 そーんなことないよ、どっかで時間作るでしょ 」





佐「 俺のために? 」





鈴「 可愛い可愛いシンメのために♡♡ 」








…… ずるい。

この人は俺の気持ちを知らずに言っているのか。
それとも知っているからこそ、わざわざ釘を刺すかのように「シンメ」という言葉を使うのか。

わかるわけない。

10年以上一緒にいて、10年以上片思いしてきた俺。
それなのに、あなたの気持ちなんて一生わからない。

まあかなり気分屋のあなただから、わかろうとすること自体難しいんだけど。










佐「 … じゃあ この後どっか付き合ってよ 」





鈴「 撮影終わった後ってこと?え~…雨だよ? 」





佐「 いいじゃん、雨でも 」





鈴「 ………………屋内なら許す!!!!!! 」





佐「 んー映画。 」





鈴「 却下 」





佐「 ショッピングモール 」





鈴「 却下 」





佐「 プラネタリウム! 」





鈴「 なんでそんなカップルみたいなことしなきゃなんだよ!!! 」





佐「 …… べつにカップルじゃなくても行っていいじゃん 」





鈴「 プラネタリウムなんか2人で行ったらさすがの私でも週刊紙ネタすぎるでしょ 」





佐「 そんな記事出てもあなたのことだしみんな信じないよ 」





鈴「 ありがたいことに恋愛しない人間として認知してくださってるからね、、、 」








「 結婚はする気ない 」「 今は恋愛に興味ないです 」
そう何度も公言してるあなたは、ちょっと事務所の人と2人で外出しているところを撮られたって熱愛報道までには至らないくらい 世間からの信頼を得ている。


それは入所から今日まで、一度もコレといったスクープを出さなかったあなたの努力。

そして、「 ファンを裏切りたくない 」というあなたの強い意志と、「 批判されたくない 」という 今までの辛い過去から植え付けられたトラウマへの恐怖。


やっぱり 俺には考えられないほどのものを背負っている。
それを俺のワガママで壊すわけにはいかない。








佐「 じゃあ俺の家でどうですか 」





鈴「 ははは、そこが1番安全だよねやっぱり 」





佐「 とか言ってもさあ、俺ら外いても基本バレないけどね 」





鈴「 ほんとだよね、まじ自意識過剰なんですけど~~~~~~ 」





佐「 あなたがね???? 」





鈴「 ひどいなあ、アイドルは自意識過剰ぐらいで丁度いいんだよ。いいよ、どっか買い物行こうよ。 」





佐「 ほんと?何か買いたいものあんの? 」





鈴「 勝利が先にショッピングモールって言ったんでしょ?笑 ないの?買いたいもの。笑 」








あ、、そうだったっけ。

あなたと行けるならどこでもいいから何も考えずに口にしちゃってた、なんて言えるわけない。








佐「 …… ある、かなあ。 」





鈴「 はあ、嘘じゃん。ないんでしょ。笑 」





佐「 ……うざすぎ 」





鈴「 シンメなめんなよ、勝利のことなんてお見通しです~~~~ 」








じゃあ俺があなたのこと好きなのも知ってる?

そんなこと言えなくて。
言えないことさえも気付かれているような気がする。


……俺はあなたの考えていることなんてわからないのに、あなたは俺の脳内を見透かしているみたいで、

やっぱりずるい。


でも、そんなずるいあなたが、

やっぱり好きだ。








スタッフ「 お2人とも、そろそろ撮影開始です~ 」





鈴「 はーいありがとうございまーす 」





鈴「 よし行こっか、終わったら2人で買い物!今日も頑張るぞーえいえいおー! 」





佐「 何その掛け声。笑笑 」








明らかにテキトーな掛け声を口にしながら部屋を出ていったあなたに自然とニヤニヤしちゃって。

あ~~~~~~、可愛い、買い物楽しみ……。

楽しみだし、そわそわしちゃいそうだし。
俺もう今日の撮影うまくできるか分かんない!!!!


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