「私、家ここ。じゃあね」
「え、あんたの家でかない?」
大きな赤煉瓦で囲まれ、おまけに大きな庭付き。まるで絵本の中にいるかのような立派な豪邸を指差す彼女。黒い鉄製のおしゃれなもんには、確かにNatsukiとある。
「あんたんち金持ちなん?うらやましいわ」
「?ありがとう」
彼女と別れてから、私は重い足をひきづりながら家へ向かう。
さっきの家を見るとうちの家がぼろっちく見えるな。しかしまあ、那月の腹の中が知れた1日だった。少しの達成感を胸に玄関を開ける。
「姉ちゃん!さくらが!さくらが俺をぶった!」
「はあ?あたし悪くない!りくが悪いんじゃん!」
「お前ら黙れよ!それか死ね!」
「おぎゃ、おぎゃあー!」
なんたる地獄絵図。これがあたしの家なのだ。いやでも那月の家の優雅な雰囲気を妬む自分がいる。
突然だけど、あたしの親はどうしようもないやつだ。
学生の時に出会った2人はとても無責任な恋をした。今でも彼らにはお互いのことしか見えていない。そんな彼らの愛の副産物であるあたし達は彼らの視界にも映らない。実に勝手極まりない。
あたしは不運にも一番最初に生まれてきてしまった長女だった。後から後から生まれる弟妹の世話をするのは必然的であった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!