放課後、靴箱から乱暴にローファーを取り出す。まあ、誰もそれくらい気づかない。
校門を出て、帰り道を歩くとあいつがいる。最近わかった。こいつとあたしはお隣さんだってこと。
田んぼばかりの田舎なので、障害物は何もない。こっち方面の友達もいないから、黙って後ろを歩く。
不意に彼女が口を開く。
「今日、体育でペアを組んでくれてありがとう」
急になんのことだと思った。確かに今日の体育は彼女とペアになったが、今いうことではないのが確かだ。
動揺するあたしを振り返りもせず、たどたどしい日本語で言葉を紡ぐ。
「日本、知り合いいなくて心細かったから。あの時みんなさっとペア組んでた、わたし取り残されると思った。本田さん友達に誘われてるの断って一緒してくれた。本田さんがいい人だったでよかった。嬉しかっただった。」
「ふっ、何それ」
聞こえなかったことにするつもりが、思わず声が漏れた。
別に彼女のためじゃなくて、先生に組んでやれと言われたから組んだんだけど。おそらくあの体育教師日本人のあたしでも聞き取れないとかあるから、彼女はもっとわからなかったんだろう。
「別に君のためじゃないんだけどー」
「え、そんな、本田さん優しいじゃないの?」
「残念でしたー」
「えー、」
ぎこちない会話だ。案の定途中で途切れた。冬眠から覚めたカエルが足元を飛び回る。
いつのまにか横並びになったあたしたち。










編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!