病院は、静かだった
人はたくさんいるのに
音だけが遠く感じる
――診察室の前
椅子に座る、テヒョン
点滴の管が、腕につながっている
顔色は悪い
でも、表情は変わらない
ただ、ぼんやりと前を見ている
廊下の向こうから、足音が近づく
早い 焦った足音
テヒョンは、少しだけ目を向ける
そこにいたのは――
ジョングク 、パパだった
目が合う
でも 、何も言わない
久しぶりに顔を見たのに何も感じない
小さく、それだけ言う
短い返事
それだけで、会話は終わる
距離は、まだ遠いまま
看護師の声
2人で、診察室に入る
椅子に座る
医者が、向かいに座っている
空気が、重い
静かな声
テヒョンは、ぼんやり聞いている
グクは、まっすぐ医者を見る
一つ一つ、言葉が落ちる
一瞬、間が空く
その“間”が
やけに長く感じた
静かに、告げられる
一瞬 、何も聞こえなくなる
白血病
その言葉だけが、頭の中に残る
グクの声
低く、かすれている
医者が続ける
言葉が続く
でも
グクには、ほとんど入ってこない
ただ1つ
“息子が病気”
その事実だけ
隣を見る
テヒョンは静かだった
驚いた顔でも泣いているわけでもない
ただ
小さくつぶやく
それだけ
思わず、グクが聞く
テヒョンは、少しだけ考える
そして
それが、本音だった
怖くないんじゃない
“どうでもいい”だけ
グクの表情が、わずかに崩れる
“どうでもいい”
その言葉が、あまりにも重かった
医者が続ける
でも
2人の間には
まったく違う重さの沈黙が流れていた
一人は――
何も感じないふりをしている
もう一人は――
初めて
すべてを失うかもしれないと知った
この日
“ただの親子”だったはずの関係は
完全に変わり始めた















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。