羽の成長に伴う高熱にうなされながら、
るきなが掠れた声で問う
病院の消毒液と、
死の足音が混ざり合うこの部屋に、
彼女を閉じ込めておくことはもう限界だった
俺は神の理を一部、強引に捻じ曲げた
死神としての力を使い、
るきなの体を "透明な側" へと引き込む
これで、看護師にも、監視カメラにも、彼女の姿は映らない
俺は彼女を横抱きにし、窓から夜の空へと踏み出した
死神に重力は関係ない
俺たちは風に乗り、眠りについた街を見下ろしながら、
誰もいない海辺の遊園地へと降り立った
車椅子も、点滴の管もない
るきなは、俺の腕の中で子供のように瞳を輝かせた
俺は彼女を観覧車の最上部へと座らせた
地上数十メートル
そこは、神の視点に近い、静寂に満ちた場所だ
俺は彼女の背中にある、
重く育った羽を優しく撫でた
かつては醜い病の象徴だと思っていたそれが、
今は俺と彼女を繋ぐ、唯一の絆のように思えてならない
その言葉は、俺の胸を鋭く刺した
彼女が生きることを望めば望むほど、
天使病の皮肉なルールが牙を剥く
俺が彼女を愛し、彼女を特別に扱うほど、
彼女の背中の羽は、
俺が "狩らねばならない形" へと完成されていくのだ
"神様が何と言おうとも"
俺は彼女の額に口づけを落とした
それは死神としての慈悲ではなく、
一人の男としての、狂おしいほどの独占欲だった
るきなは俺の胸に顔を埋め、安らかな寝息を立て始めた
夜空を見上げると、月が不気味に赤く染まっていた
俺に与えられた猶予は、もう残り少ない
"次に月が満ちる時"
俺はこの手で、愛する彼女の翼を切り裂かなければならない
それが、神に造られた俺に課せられた、
あまりにも残酷な "仕事" だった














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!