第4話

No.4
12
2026/04/18 08:00 更新
るきな
るきな
ねぇ、蒼
るきな
るきな
外は…どんな匂いがする?
羽の成長に伴う高熱にうなされながら、

るきなが掠れた声で問う

病院の消毒液と、

死の足音が混ざり合うこの部屋に、

彼女を閉じ込めておくことはもう限界だった
死神
死神
…見せてやるよ
死神
死神
お前が一度も見たことのない世界を



俺は神の理を一部、強引に捻じ曲げた

死神としての力を使い、

るきなの体を "透明な側" へと引き込む

これで、看護師にも、監視カメラにも、彼女の姿は映らない



俺は彼女を横抱きにし、窓から夜の空へと踏み出した

死神に重力は関係ない

俺たちは風に乗り、眠りについた街を見下ろしながら、

誰もいない海辺の遊園地へと降り立った
るきな
るきな
…すごい
るきな
るきな
私、本当に飛んでるみたい
車椅子も、点滴の管もない

るきなは、俺の腕の中で子供のように瞳を輝かせた



俺は彼女を観覧車の最上部へと座らせた

地上数十メートル

そこは、神の視点に近い、静寂に満ちた場所だ


死神
死神
るきな、見てみろ
死神
死神
あの街の灯り一つ一つに
死神
死神
誰かの偽物愛が灯っている
死神
死神
でも、ここには俺とお前しかいない
俺は彼女の背中にある、

重く育った羽を優しく撫でた

かつては醜い病の象徴だと思っていたそれが、

今は俺と彼女を繋ぐ、唯一の絆のように思えてならない
るきな
るきな
蒼、あなたといると
るきな
るきな
自分が病気だってこと、忘れちゃう
るきな
るきな
…不思議ね
るきな
るきな
あんなに死ぬのが怖くなかったのに
るきな
るきな
今は少しだけ、明日が来るのが楽しみになってる


その言葉は、俺の胸を鋭く刺した

彼女が生きることを望めば望むほど、

天使病の皮肉なルールが牙を剥く


俺が彼女を愛し、彼女を特別に扱うほど、

彼女の背中の羽は、

俺が "狩らねばならない形" へと完成されていくのだ


死神
死神
…明日も、明後日も
死神
死神
俺が隣にいてやる


 "神様が何と言おうとも"


俺は彼女の額に口づけを落とした

それは死神としての慈悲ではなく、

一人の男としての、狂おしいほどの独占欲だった

るきなは俺の胸に顔を埋め、安らかな寝息を立て始めた



夜空を見上げると、月が不気味に赤く染まっていた

俺に与えられた猶予は、もう残り少ない



 "次に月が満ちる時"



俺はこの手で、愛する彼女の翼を切り裂かなければならない
それが、神に造られた俺に課せられた、

あまりにも残酷な "仕事" だった

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