第5話

No.5
14
2026/04/20 01:00 更新
夜の散歩から病室へ戻った翌日、

るきなの周囲がにわかに騒がしくなった




普段、見舞いなど一人も来なかったはずのその場所に、

数人の男女が姿を現したのだ


同級生
るきな、体調はどうだい?
同級生
ずっと心配していたんだ
そう言って、

さも親しげに病室に入ってきたのは、

かつて彼女を "地味で暗い" と笑っていた大学の同級生たちだった
母親
その後ろには、入院費を渋り、

彼女を "お荷物" 扱いしていたはずの母親も立っている



俺は部屋の隅で、透明な姿のまま彼らを冷ややかに眺めていた



彼らの視線の先にあるのは、るきな本人ではない

入院着の背中を盛り上げ、

時折隠しきれずにこぼれ落ちる、真珠のように輝く羽の破片だ


同級生
すごい!るきな!!
同級生
この羽、本物の天使みたい!
同級生
SNS載せてもいいかな?
母親
るきな、お母さんね
母親
あなたがこんな特別な病気に
母親
かかるなんて思ってなかったわ!
母親
あなたを愛してるから、力になりたいのよ!


吐き気がした


彼らは "天使病" の希少価値に群がっているだけだ

珍しいもの、美しいものに関わっている自分に酔いしれている

それが、どれほどるきなの心を削っているかも知らずに

るきな
るきな
…帰って、お願い
ベッドの上で、るきなが震える声で言った

だが、彼らは聞こえないふりをして、

偽りの愛の言葉を投げつけ続ける

母親
そんなこと言わないで
母親
愛してるって言ってるじゃない


その言葉が響くたび、

るきなの背中の羽が激しく波打ち、彼女の体力を奪っていく



俺は我慢できず、彼らの耳元で、

死神にしか出せない不協和音を叩きつけた
同級生
ひぃっ!?
母親
いや"ぁぁ"!?
突然の寒気と原因不明の不快感に、

彼らは顔を青くして部屋を飛び出していった 

静まり返った部屋で、

るきなは糸が切れた人形のように倒れ込む
るきな
るきな
…蒼、さん、
死神
死神
ここにいる
死神
死神
…あんな奴らの言葉を信じるな
死神
死神
あれは愛じゃない、ただの欲だ
俺は彼女を抱き上げ、その耳元で低く囁いた
死神
死神
いいか、るきな
死神
死神
お前を本当に見ているのは俺だけだ
死神
死神
お前の痛みも、お前の本当の明るさも
死神
死神
全部俺が独占してやる
死神
死神
だから、あんなゴミみたいな言葉で汚されるな
るきなは涙を流しながら、俺の腕の中で頷いた
るきな
るきな
…うん
るきな
るきな
私、蒼さんの言葉しか
るきな
るきな
もう、いらない



彼女が俺に依存すればするほど、

俺の愛は深く、重くなっていく



そして比例するように、

彼女の背中の羽は、

今や部屋を埋め尽くさんばかりに、残酷な美しさを完成させていった


神の鐘が、また一回、重く鳴った

 "仕事" の日が、ついに明日へと迫っていた

プリ小説オーディオドラマ