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第1話

No.1
252
2026/04/12 08:13 更新
このお話は
『彼女組は奇病持ち。』の10話の番外編
を本編として描きます
一応リンク貼っときますね
まぁ、見ていなくて大丈夫なようになっているので楽しんでいってください
というか、設定持ってきただけなので
リメイク版みたいな感じです!!
その日、俺は "死神" としてひどく退屈していた
神に造られてからどれほどの時が経ったのか、

もはや数えるのも止めた

俺にあるのは、ただ一つ

月に一度、この街に現れる "天使病" の患者を見つけ出し、

その背に忌々しく咲いた白い羽を、銀の刃で鮮やかに刈り取ることだけだ


  "天使病"
それは、誰かに深く愛されているにもかかわらず、

本人が「自分は誰にも愛されていない」と

絶望している者に発症する奇病

その認知の歪みが、背中に偽物の羽を育てる


俺の仕事は、その羽を狩ることだ



羽を失い、

空中に放り出された人間が地面に叩きつけられるまでに、

彼らを愛している「誰か」がその身体を受け止めれば、

病は癒え、命は助かる

だが、俺がこれまで見てきたのは、

愛を囁いていたはずの男が恐怖に顔を歪めて逃げ出す姿や、

我が子を抱き止めることすら忘れて立ち尽くす親の姿ばかりだった
死神
死神
愛してる
死神
死神
なんて、結局はただの言葉遊びだ
人間からは決して見えない透明な身体で、

俺は病院の冷たい廊下を歩いていた

白衣の医者も、泣き叫ぶ子供も、

俺の身体をすり抜けていく

俺はただ、消されないために仕事をこなすだけの機械

神の不興を買えば、俺という存在はこの世から消去される



 "やる" 以外、選択肢はない



そんな時だった


廊下の隅、

日当たりの悪いベンチに座っていた一人の少女が、

ふっと顔を上げた



黒い、吸い込まれそうなほど真っ直ぐな瞳

彼女は、

俺の身体を通り過ぎようとする医者や看護師には目もくれず、

ただ一人、そこに立っている俺の瞳を正面から捉えた
るきな
るきな
…あなた、誰?
鈴を転がすような、

けれどどこか生気を欠いた声

俺は立ち止まった

心臓などないはずの胸の奥が、

あり得ない速度で脈打った気がした
死神
死神
…俺が見えるのか?
るきな
るきな
えぇ
るきな
るきな
そのに立っているじゃない
るきな
るきな
真っ黒な服を着て、すごく…
るきな
るきな
寂しそうな顔をしてる
驚きで思考が止まる

死神が見える人間など、この世には存在しない

唯一、羽を狩る "執行" の瞬間を除いては


俺は彼女を値踏みするように見下ろした

 "るきな" と名札に書かれたその少女は、

大学1年生だという

色白の肌は病室の壁と同じくらい白く、

どこか儚げだ

そして、俺は見てしまった
彼女の背中

薄い入院着を押し上げるようにして、

小さな、本当に産毛のような白い塊が芽吹いているのを
死神
死神
天使病…
るきな
るきな
てんしびょう?何のこと?
るきなは首を傾げた

その仕草には、

死神を目の前にしているという恐怖が一切なかった

彼女にとって、

俺はこの孤独な病院の中に現れた、

ただの "風変わりな客人" に過ぎないようだった
誰かに深く愛されているはずなのに、

自分は孤独だと信じ切っている少女



俺は口元を歪めた

これまでに見てきた、

傲慢で偽善に満ちた愛の物語とは

 "何か" が違う予感がした


死神
死神
…死神だよ
死神
死神
お前を終わらせに来たかもしれないし
死神
死神
そうじゃないかもしれない
俺は彼女の目の前に屈み、

その頬に触れようと手を伸ばした

本来なら、俺の指は空気を切るだけのはずだ

けれど、指先に確かな熱が宿った
るきな
るきな
…?
るきな
るきな
変な人、、
るきな
るきな
でも、やっと私を見つけてくれる人がいた
るきなは微かに微笑んだ



その瞬間、

俺の中にあった "退屈" は、

ドロリとした昏い "娯楽" へと変貌した


神様、見てるか

あんたが作ったこの欠陥だらけの娘を、

俺がどう弄んでやるか


 
俺は、この日初めて、

仕事以外の目的で人間に執着した

それが、自分自身を破滅へと反逆になるとも知らずに

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