第5話

あの子とあの子の共通点。2
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2022/10/02 08:42
これは愛緒が名前をもらう前のお話…
母親
その赤い目、気持ちが悪いわッ!
幼い頃
幼い頃
そんなこと言われても知らねえし。
母親
なんて言う口の聞き方なのッ!? 気持ち悪いッ!!
そう言って愛緒の母親は愛緒に暴力振るう。

愛緒が血だらけになっても、自分の手が血だらけになってもずっと続く。

いわゆるヒステリックというやつだ。

愛緒も父親は居ない。こんな母親を見かねて出て行ってしまったからだ。

こんな生活に耐えられなくなった愛緒は家を出て行くことにした。
外に出て見たはいいものの、愛緒には行く当てがない。

ましては友達や助けを求められる家もない。

愛緒は途方に暮れ、路地の角の方で座っていた。


その時だった。


愛緒は1人の女の子に出会う。
幼い頃
幼い頃
…?
どこかのお嬢様なのかすごく顔が整っている。

その子と少し話をしてみると意外にも愛緒とその子は共通点が多かった。

目が赤いこと、父親がいないこと、など。

他にもある気がしていたが愛緒は聞き出すことが出来なかった。
幼い頃
幼い頃
あなた、お名前は?
幼い頃
幼い頃
名前…? そういえば付けられてねえかも。
昔から親に愛をもらってこなかった愛緒は名前がなかった。

そこで、女の子は愛緒に”愛緒“と名前をつけてくれた。
幼い頃
幼い頃
赤色の目が嫌なんでしょ?
幼い頃
幼い頃
なんでそれ聞くんだよ。まあ嫌だけどな。
幼い頃
幼い頃
赤の反対は…青?
女の子は少し悩んでから、何かをひらめたような顔をして言った。
幼い頃
幼い頃
じゃあ、あなたにあなたの下の名前の愛を分けてあげる!
幼い頃
幼い頃
っていうことで、名前は“愛緒”ね! 愛は一緒に分けるって意味で、愛に一緒の緒!
幼い頃
幼い頃
合わせて愛緒…か。まあ良いんじゃないか?
愛緒はそれから初めてその女の子と自己紹介をした。

その時初めて、愛緒はその女の子の名前を正式に教えてもらう。
幼い頃
幼い頃
私の名前はあなたの下の名前! よろしく!
幼い頃
幼い頃
俺は愛緒。よろしくな。
それからというものずっと愛緒とあなたの下の名前は共に時間を過ごした。

何日間かもしれないし何年かもしれない。

でもそれは誰にも分からない。


だって、人間の愛緒という人物はもうこの世にはない。

あなたの下の名前がその手で壊したのだから…

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