目が覚めると隣にあなたの仮の名前は居なかった。
流石に帰ってしまったようだ。だって、もう朝だったから。
居るわけがない。そう分かっていたけど少し寂しかった。
話しかけてきたのはあなたの仮の名前。
居ないと思っていたが少し離れたところに居ただけだったらしい。
それだけですごく嬉しくなってしまうのはあなたの仮の名前に依存しているからだろうか。
なんて言って僕をはぐらかすあなたの仮の名前。
僕はあなたの仮の名前の言っていることが全然分からない。
なんで僕にあなたの仮の名前のことが分かると思ってるんだよ。
あなたの仮の名前目線
ゆきむら。さんに教えるつもりは全くない。
というよりも教えられる環境になるはずが無い。
私が死にたい理由? そんなの一つに決まってる。
ずっと昔から分からなかった。ずっと昔から与えられて来なかったもの。
愛緒でも無理だったんだ。ゆきむら。さんもきっとダメ。
聞き分けが悪い。こんなに悪い人初めて見た。
みんなそう言ったらどっか行くのにずっと私の目を見てくる。
そういうところが嫌なんだ。私が私じゃないみたいに…気持ち悪い。
なんて微笑むから自分が私が、分からなくなるんだよ。
ゆきむら。さんが何を考えているか本当に分からない。
ここまで分からないことも初めてだ。
図星だった。
昔からどこかに行かせてもらうなんてしてもらえなかった。
だから心が弾むなんて感情。消して、見て見ぬ振りをした感情が私の中に取り戻されていく。
そう。
”ゆきむら。さんに着いていきます。“
どこまでも、いつまでも、取り返しのつかないこの感情も全部、背負ってもらうから。
出かけよう。ゆきむら。さんに着いて、どこまでだって。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!