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第2話

ジーニーの本 その2
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2025/06/15 01:00 更新
 俺がL社に着いた時、俺以外には人がいなかったような気がする。(気がするだけで実際にはオフィサーがいたのかもしれないが…)

片手には小さくて空っぽな家を照らしていた小さなランプと、あの子との記憶だけ。ほとんど身一つだったと思う。多分だけど。




少し会社の前で待っていると、1人の美しい女性がきた。いや、女性ではあるんだが、おそらく人ではない何かだった。

(いや…でも、まさか…..な?)

都市に人によく似た機械はいないはずだ。もしやと思いつつ、その女性?に着いていくと、そこには黒髪にxと描いてある男性?がいた。髪も短かったし、スーツでわかりずらいが骨格的にも男性であるはずだ。

「初めまして、ジーニー君。
  ここで管理人を勤めているXだ。よろしくね」

柔らかく言葉を紡ぐ彼は、続けて言葉を放った

「L社への入社おめでとう。これから君は、晴れてエージェントの仲間入りだ。
  そうとはいっても、君以外に職員はいないんだけどね!
   まぁ、これから50日ぐらいよろしくね」


50日くらい?ってなんだ?短期雇用なのか?と思った俺は間違ってないと思う。まぁ実際のところ200日間以上働かされたのだが、時計は50日ぴったりしか経ってなかったので、これはこのことを言っていたんだなと気づいたのは、L社の職員ではなくなった頃だったのだが……..




1日目の業務は、難なく終わったと思う。管理人の指示通り宙に浮く骸骨に懺悔をして、報告書を書いただけだった。でも、変化があったのは2日目、その日は新入社員が2人いた。髪色が似ていたから姉弟だろうという遠目からの予測をしてみたが、俺に気づいて声をかけてきた2人の声に、俺は腰を抜かしかけたが….これは誰にも言っていないし、言うつもりもない。それぐらいびっくりしたなんて口が裂けても言えないと思う。

まぁ結論から言うと、2人は姉弟ではなく、兄弟だったようだ。そして、このことを本人に話して大爆笑されるのはもっとあとの話だ。

 兄の方はアラン、弟の方はアントンと言うそうだ。今思うと、あの頃の俺は人間という人間を嫌い、何もかもを憎んでいたような気がする。そんな俺に声をかけにきたアントンはおかしかったような気がするが、きっと彼の不死身たる由縁はここにあるのだろう。

でも、彼らのおかげで今の自分があると言っても過言ではない。アランはいきなり俺に話しかけたアントンを咎めながら、『よろしくな?オレ』

と優しくいった。俺はそれに対して何も言えなかった。その日来た腹が変な位置にある小鳥はやけに兄弟に懐いていて(特にアントンに)、育ちがいいやつは何でもできるんだなと思った。




ただ、2日目はとにかくよく伸びる小鳥に突かれて血が付いたから、それだけ流そうと共有の大浴場に向かう途中に、アランが後ろから

「あぁ、ちょうどよかった。一緒に風呂入ろ?」

距離の詰め方おかしくないか?そう思いながら何も言わずに向けた視点を戻し、彼を置いて歩いたはずだったが、気づいたら一緒に風呂に入って、「髪が傷んじゃってるの気になっちゃってさ〜」なんて言いながら自分のシャンプーで俺の髪を洗い始めた、そのままトリートメントまでつけて、湯に浸かってからも「アントンがさ〜」と弟の話をずっとしてきた。浴場から出てからも、「アントンがね〜」と話し続けていたのでさっさと服を着て、1人で部屋に戻ろうとすると、手を掴まれ、「髪、乾かすよ〜」と椅子まで連れて行かれた。髪を洗われた時もそうだったが、まず言葉で伝えられんのか、こいつ。ま、勘のいいみなさんならお気づきでしょうが、髪を洗われた時も、手を掴み、引っ張りながら椅子に俺を座らせてきた。巣に住む奴らは、どこか頭がイカれているんだ。これは経験談だな。

 でも、2人に救われたのもまた事実だった。今の俺にはたくさんの仲間たちがいる。でも、1番初めに声をかけてくれて、気にかけてくれて、それから、優しく褒めてくれて、あの子を失ってから空っぽになってしまった心を暖かい気持ちで1番初めに埋めてくれたのは、確かに2人だったんだ。あの頃、何も言わなかった俺に、根気強く話しかけ続けて、ほんと、物好きなやつだと思った。でも、心から感謝しているんだ。2人の呑気さは、居なくなった両親の代わりに、守ろうとしたものを失い、何もかもから孤立した俺を救うには十分だった。ありがとう。今はそれしか伝えられないけど、いつか、終わりが来ると分かった時は、あの時風呂場で話してくれたように、今度は俺が秘密の家族の話をしてあげよう。たった1人、弟がいたことを。誰にも話していないけど、あの子が本当にいなくなってしまう前に、あの子、いや、ホースという最愛の弟がいたことを話して、俺を弟のように扱うアランに、衝撃の事実を叩き込んでやろうじゃないか。
 光らないぼろぼろランプだけだった質素な部屋は、隈が酷いからなんて言いながらアントンが俺にくれた安眠?アロマに、ハイルがくれたシックな感じの時計、それからアブノーマリティたちを模った小さな人形たち(暗い森のみんな)をマキさんとアランが作った人形で彩られていった。本当に、今の俺は、みんなに支えられてできているよ。ありがとう。
ただ、少し後悔があるとすればL社が崩壊した時、一緒に社員寮も崩れていったんだ。案の定、部屋に置いていたものは全て潰れて無くなると思っていたが、アランが「これ、大事だろ?」なんて言いながらランプを俺に手渡してきた。ただ、何もかもが本当に終わる最後の時、みんなから貰ったものを全て部屋に置いてきてしまったこと。そのくらいだな。 

                                  プロローグ終わり
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