「さて、なにから話したらいいんだろう。」
レムレスが口を開く。
「センパイ、ワタシ、話したいことがあります」
フェーリが言った。
「話?なにかな?」
「アルルは…自殺したのではないでしょうか?」
「…その話について詳しく聞かせてくれないかい?」
「もちろんです」
これから議論がはじまるんだ…。ちゃんと話についていけるようにしないと…
「アミティ、」
「へ、なに?」
「今から議論、はじまるけど…たぶん、話に矛盾してるのが出てくると思う。気になる所があったら指摘とか、してみて」
「…!シグ…そうだね、やってみるよ!」
「うん」
…なにか気になるのがあったら勇気を出して指摘してみよう。
「ワタシは、アルルが自殺したんだと思うわ
死体の状況を見て。」
「あ、手に矢を持ってるね」
「そう、つまりこの状態からして…自分で自分の体を刺し、自害した。」
「まぁ、確かにこんな生活送ってたらおかしくはなるかもね…」
…あれ、でも。それは不可能なんじゃ…?
…そうだ。指摘してみよう。
「ね、ねぇ、それはおかしいんじゃないかな?」
「…なにがかしら」
「確かに矢を持ってるけど…自分で刺したとは考えずらいと思う。だって、刺した跡があるのは背中だったから」
「…あぁ、自害したとすれば…わざわざ背中にする理由がないモノね…」
「じゃあ、自害じゃないとしたら…犯人がいるってことだね」
「う…そうだね」
そうだ。…つまり、犯人がいるんだ。絶対、見つけないと。改めて気を引き締める。
「そういえば…」
クルークが思いだしたように口を開く。
「なんでアルルは扉の前に倒れてたんだ?もしあそこにアルルがいたなら、犯人が後ろにいる前提だったなら、色々矛盾してくるぞ?」
「あぁ、確かにそうですわね…後ろから刺したならなんで仰向きなのかしら?前から襲ったなら刺した位置が矛盾しますし…」
ラフィーナが相づちをうつ。
「つまり…自害だったんですわね!」
ウィッチが言う。
「いやさっき違うってアミティさんも言ってましたわよ…」
ラフィーナがすぐさま否定する。
「じゃあなんなんですのこの矛盾は?」
ウィッチが不機嫌そうに言う。
…あそこにあった血のあと…
そういえば、死体周りにはあまり血が付着していなかった。…つまり、
「そ、そのことなんだけどさ…移動された、ってことなんじゃない?」
「移動された?」
みんな不思議そうにしている。
「うん、あのね、死体と少し離れたテーブルに少し血が付いてたんだ。それに、死体以外には…周りには血が付着してなかった。つまり、アルルは犯人によって殺されたあと、運ばれたんだよ」
「でもテーブルには少ししか血はついてなかったような…」
「うん、少ししかなかった理由、それは…
拭き取られたからだよ。それを示す証拠は…」
ポケットに入れておいたハンカチを取り出し、見せた。
「この血の付いたハンカチだよ!」
「本当だわ、血が付いてますわ!」
「…アルルの持ってたハンカチか」
「そ、そうなんですの!?初耳ですわ!?」
「あいつ結構前から使ってたが知らなかったのか」
「ハンカチなんかいちいち気にしませんわ!このヘンタイ!」
「ヘンタイって言うな!」
「ま、まぁまぁ落ちついて…」
ふたりはお互いムッとしながらも、それ以上ヒートアップはしなかった。
「…ならなんで移動させたんですの?」
「……混乱させたかったんじゃないか?あとは現場をそのままにしたらバレるからとか。で、なんらかの理由で移動させたのがバレないようにハンカチで拭いた…そうゆうことだな、アミティ」
「う、うん!そうだよ」
「なるほど、移動…それなら辻褄が合うな。」
クルークも納得したようだ。
「事件の流れを整理すると、まずはテーブル付近のイスにでも座ってたのであろうアルルを後ろから矢で刺し、移動させて矢を持たせて自殺に見せかけた…ってことだね」
レムレスが状況を整理してくれる。
「…矢ならラウンジに飾ってたし、誰でも殺せますわね」
ウィッチの言うとおりだ。となると。
「じゃあ、アドリブの確認しなきゃね。今日やられたと考えるのは不自然だし…アルルは少なくとも夕食までは生きてたから、そのあとのアドリブを確認しよう」
レムレスがそう言った。
「ちなみに僕は夕食後はフェーリと娯楽室にいたよ。…そのあとはウィッチに誘われて配信してたね。」
「そうね、センパイが娯楽室にいたことはワタシが証明できるわ
センパイが配信に行ったあとは図書館に行ったわ」
「そういえばそうだったね」
どうやらレムレス、フェーリは娯楽室から出たあとレムレスはウィッチに配信に誘われてそこから別行動、レムレスは配信、フェーリは図書館に行ったんだとか。さらに話を聞いた所、そこからは図書館にいたクルークと配信をふたりで見ていたらしい。
フェーリが来る前のクルークのアドリブは一応探索に来ていたわたしが証明できる。まぁ、わたしが来る前に殺した可能性は無いことは無いと思うけど。ラフィーナはずっと外にいたらしいが、レムレス、フェーリ、医務室にいたリデルが部屋からずっと見えていたらしく、なぜかアドリブになった。本人は見られてる自覚はなかったらしいが。それから、わたしもシグとずっと一緒にいたのでアドリブを証明できる。…まぁ、探索をある程度やったらシグは先に牢屋に戻ったんだけど。
けどそのあとはすぐリデルのいる医務室に行ったから…その間以外はわたしにはアドリブがある。残念ながら、リデルにはそれ以前のアドリブは無いらしいが。それはほぼお兄さんも同様で、夕食後はすぐシャワールームに行った後牢に戻って眠ったらしい。…一応、牢屋の中で寝てるのは見かけたけど…シグも見てたけど…。わたしが見た時以外ではお兄さんとリデルはアドリブが無い。ウィッチは夕食後配信機能に気づいたからとレムレスを探していたらしい。アルルは…夕食後についてはよくわからない。
「ねぇ、食堂に最後のほうにいたのは誰か分かる?」
「あぁ、最後に残ってた奴が怪しいかも知れないのか。それがリデルかシェゾなら確定だな!」
クルークがそう言う。いや、確定って訳じゃない気はする。…ただ、
「いや、すぐ決めつけるのはよくないよ!…でも、夕食後には目撃証言がないんだから、その可能性は高いよね。」
「だよね、なら出て行った順を振り返るのか一番さ」
「えぇ…あんまり順番なんて気にしてませんでしたぁ…」
「最初に出たのは僕だよ、出て行く前にフェーリが着いてきてるか見ようとして全体を見てたしね」
「確かにワタシたちが最初だった気がします…さすがはセンパイね」
最初に出たのはこのふたり…だいぶ白寄りだなぁ。
「それで、次に出たのはリデル」
シグが言う。そういえば5人で食べてたけど、リデルが最初に出て行ってたし…となるとお兄さんが犯人…?いやいや、でもまだわかんないよね…?
…違う、よね?
「次にわたくしが出たはずですわ」
ラフィーナが言う。するとクルークが、
「で、それを僕が追いかけた記憶があるよ」
「え、そうなんですの?」
ラフィーナ、自覚無かったんだ…。
「クルークが出ていったあとすぐわたしとシグも行ったよね」
「うん、最後に残ってたのはシェゾとウィッチとアルル」
「じゃあやっぱりシェゾが…」
「ち、違う!なんで俺になるんだよ!」
「だって状況的に考えて君しかいないじゃないか」
「待て、そもそも俺にはアルルを殺す意味が無い!それに、」
「意味が無い?そんなの誰が信じるんだい?」
クルークがニヤニヤしながら言った。
「わたくしはたぶん信用しますわよ、たぶん」
ウィッチがいたずらっぽくいう。
わたしは言葉の続きが気になって、
「…それに?」
「最後に出たのはアルルかウィッチのはずだ」
「…それってどうゆう…?」
「あら、シェゾさんおもしろいジョーダンをつきますわね。わたくしが三人の中で最初に出ましたわよ?」
「………??つまり…」
これは話が矛盾している。つまり。
「どっちかが嘘をついてる…?」
…どっちかが、犯人…?
「…シェゾさん」
「…ウィッチ」
「悪く思わないでくださいね、シェゾさん?これも生き残るためですわ。」
「それはこっちのセリフだ。俺のためにもアルルのためにも、勝たせてもらう」
ど、どっちを信じたらいいの…!?
とにかく、話を聞こう。もし犯人なら…矛盾点が出るはず。
「わたくしは夕食後にすぐ探索するためにマップを開きたくて、スマホを見たらなんと配信機能があることに気づきましたの。だから退出したあと、リーダーシップのあるレムレスさんを探して、せっかくならと配信をしたわけです。そしてシェゾさんと同じく、わたくしにはアルルさんを殺す動機がありませんわ。」
「待て、お前、スマホなんか触ってたか?」
「触ってましたわよ、おバカさんねぇ」
「誰がバカだ💢」
「俺はさっき言った通り、夕飯後はすぐシャワールームに行ってそのあとすぐ牢に戻って寝た。アルルと探索に行って疲れてたから、はやく寝たかったんだ。そして今日はやく起きたから誰もいないうちに食堂で朝飯をさっさと食べようとしたら…アルルが死んでいた。」
話をひととおり聞いたあと、すぐリデルが、
「…シェゾさんのは分かりませんけど…ウィッチさん、確かにスマホ触ってなかったです…話を聞いていると食堂で触ったと言ってるようですし…」
「…やっぱりそうだよな?」
「あらわたくしが犯人と言いたいんですの?だとしたらどう殺したって言うんですの?正面から?いいえ、叫ばれて気づかれます。後ろから?わたくしのスカートじゃイスにあたって音がして気づかれますわ。だったら、あの魔法が使えるシェゾさんの方がずっとやりやすいですわ。」
「………俺の魔法を知ってるのか?」
「もちろん知ってますわ。貴方が教えてくれましたもの」
「…幼なじみのアルルにすらあかしたこと無いし教えた覚えは無い。」
…ウィッチも怪しくなってきた。…そうだ。これを聞いてみよう。なんかみんな気にしてないけど…。
「ねぇウィッチ、お兄さん、質問いい?」
「あらなんですのアミティさん」
「その…ふたりの魔法ってなに?」
そう、魔法。ここには魔法を使用して殺害する手段もあるのだ。だから、確認で。
「…はぁ、俺は空間転移だ。いわばテレポート。ただし鏡を通じて、だけどな。半径30メートル以内にある鏡を通して、鏡があるなら好きな所に行ける」
「そ、そんな言っていいの?」
「ここまで言わないとテレポートで背後に行って殺したと思われるだろ」
…それは、確かに。
「そ、それでウィッチは?」
「…………」
「…?ウィッチ?」
「…忘れちゃいましたわ」
「…へ?」
「…忘れたと言っているでしょう?」
「そんなことありえるの?」
「ありえますわ。だってわたくしがそうですもの」
…まさか、ウィッチがアルルを…?
こんなはぐらかしかた、犯人じゃないならしないと思うし…
「アミティ。」
「へ、なに?」
「俺はおそらくこいつの魔法を見たことがある。たぶん、なにかを隠す魔法だ。…それさえ分かれば…。」
「透明になる魔法とかそんな感じ?」
「いや…そんなんじゃない。」
「…認識できなくするとか、音を消すとか、そんな感じ?」
「たぶんな。」
認識できなくする…は違う気がする。だってそれなら前から刺した方が絶対よかったはず。音を消す?…それなら後ろからというのも無理はない。感覚を消す?そんなのあるのだろうか。
「ねぇ、ウィッチの魔法って…消音?」
「なんでそう思いますの?シグさん」
「昨日。アミティが湖行ってる間に話しかけた時に」
_______
『ウィッチなにしてるの』
『…………』
『ウィッチ?』
『~~~、~~~~』
『?』
『~~~~!!』
口は動いてたけど、声が聞こえなかった
たぶん音を消してたんだろーなーって
_______
「う、嘘…解除忘れて…!」
「…認めたな」
「っ!」
「…っ君が、犯人なの?」
やっぱり信じたくないけど、状況、反応、出来事…これを見たら、やっぱり一番怪しい。
「…ウィッチ。答えてくれ。お前が、やったのか?」
「……………。
ふ…ふふふふ…あはは!
…さすがにシェゾさんにもこんなの言われたら認めるしかありませんね。そうです。わたくしがアルルさんをやりました。」
「っ…」
『わたくしは、アルルさんと食堂に残ってました。シェゾさんは先に眠りに行きました。それは事前に聞いてましたの。アルルさんは無防備に、どこからか持ってきた紙にペンで絵を描いてました。アルルさんの大事にしてるぬいぐるみのカーバンクルさんやシェゾさん、わたくし、アルルさん自身。他にも、この屋敷の人をたくさん描いてました。それを見て、今しかないと思い、一旦音を消して退出しました。アルルさんは集中してましたから、気づかれませんでした。そしてすぐラウンジから矢を取り、こっそり近づいて刺しました。このままでは単純すぎてバレるかもしれない。なので遺体を扉の前に置き、矢を持たせました。
そしてアルルさんのハンカチを拝借して血をふき、証拠隠滅しようとしました。ハンカチは探索時間に湖に捨てましたが…バレちゃったみたいですわ。
そしてアリバイをつくるために事前に知っていた配信機能を使った…
これが、わたくしの起こした事件の真相ですわ。』
_ウィッチが、アルルを殺した犯人だった。
その事実に、ただ唖然とするしかなかった。
ゴクチョーが言う。
「それでは投票を行います。魔導師だと思う人物に自身の端末から投票してください」
…当然、ウィッチが処刑されることになった。
と、いうのに本人は笑顔を崩さない。…なんで?
「では処刑を行います。自身の端末に表示されてるボタンをぐーっと長押ししていただけると…」
「え…わたしたちがやるの?」
「はい。やはり魔導師は貴方たちが裁いていただかないとと思いまして」
…わたしが押したら、ウィッチは処刑される。そう考えると震えが止まらなかった。押したくない。押したくない。押したくない。ひとり、またふたりとみんなはボタンを押していく。…やらなきゃ、いけないんだ。震える指でボタンを押す。押しきった所で、
「はい、では魔導師の処刑を行います!魔導師さんには中央の処刑台へ連行します。あ、他のみなさんは動かないでくださいね。動いたら看守が殺しにいきますから。」
すると、中央が反転して音を立て、処刑台が上がってきた。それは、巨大な女神像だった。
「ウィッチさんには、あの中に入ってもらいます」
「な、中に…?」
すると女神像がふたつに割れ、中を表した。中は深い青の薔薇が敷き詰められ、鋭い針が女神像の内側についている。つまり、串刺しだ。さすがにこれを見たウィッチは青ざめ、震えていた。それもお構いなしに看守はウィッチを連行する。
「い、嫌ですわ!ほ、他の処刑方法にしましょう!ねぇってば!!」
本気で抵抗しているウィッチは看守にズルズルと引きずり込まれていく。
処刑台に立たされると、茨のロープで巻かれ、固定され、動けない状態にされていた。本人はガタガタと震え、怯えきっていた。
「あ…あぁ…嫌…助けて…助けて…」
でも助けにいけない。助けにいきたいのに。
お兄さんが口を開く。
「な、んで…なんでアルルを殺した?…それは、ちゃんと知っておきたいんだ」
「それは僕も気になってたな」
「っ…」
ウィッチは口をきゅっとしめ、やがて諦めたように大きな声で話しだした。
「あ…あなたが悪いんですわ!全部!全部全部全部全部!ねぇシェゾさん?」
「お…れのせい…?」
「えぇ!アルルさんなんかと仲よくするからですわ!!わたくしは…ずっと貴方が好きだったのに…一番好きだったのに…どうしても幼なじみのアルルさんには追いつけなくて…!ここに来てからもずっと…アルルさんのことばっかり!!!わたくしを見てすらくれなかった!!見てほしかった認めてほしかった受け入れてほしかった!!なのにアルルさんがいるから…邪魔だったから!…だから殺したんです。貴方のせいだわ!!全部!」
それは全部ウィッチの本音そのもので、なんの裏もなかった。
「そ、んな…そんな!すまなかった!俺が、俺がもっとちゃんとしてたら…っ!あ、ぁぁあ…」
お兄さんはぐちゃぐちゃの顔で。
「君は悪くない!大丈夫、怖くないよ、全部ウィッチが勝手にやった!君のせいじゃない!」
レムレスは必死にフォローする。だがレムレスも足が震えており、青ざめている。みんな怖いのだろう。でも、ちゃんと見届けなきゃ…
また処刑台に視点を戻すと、像が閉めはじめていた。
「ああぁ"あ"ぁ"あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
絶叫。それと共に、顔にヒビが入り、爪は黒くなりありえないスピードで伸びていく。
「あ…れは…」
「魔導師化…?」
フェーリが言う。…あれが、魔導師化。
少しずつ人としての原型が崩れていく。
…完全に魔導師化した人は、確か死なない。…つまり。ウィッチは、この先永遠に苦しみ続けるのだ。そう思うと冷や汗も止まらない。
「嫌!見て!見てくださいよ!わたくしを!わたくしだけを!お願いだから!アルルさんなんか見ないで!シェゾさん!ねぇ!やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
バタン!!!!!!!
女神像は完全に閉じてもまだ絶叫は鳴り止まない。それはわたしたちの胸を酷く締め付けた。
女神像からは血が噴き出していた。ウィッチの血だろう。そして少しすると絶叫はだんだんと人ではない唸り声に変わった。…なれはてに、なったのだろう。すると処刑台は下へと降りていき、いつの間にか中央は元の状態へと戻っていた。
「魔導師の処刑も完了したので、魔導裁判、これにてお開きです。みなさん、戻っていいですよ。」
…沈黙。ゴクチョーはすでにどこかへ行き、看守は扉を開けてどこかへ行った。
魔導裁判。それは、わたしたちの考えていたものよりずっと…残酷なものだった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。