ルナは、ひとりだった。
戦いが終わったはずの街には、まだ炎の匂いが残っている。
ヴェイルの姿はもうなく、空には欠けた月が浮かんでいた。
「……ヴェイル。あなたの分まで、強くならなきゃいけないのに……」
彼女の指先で、砕けたストーンの欠片が微かに光る。
その光が消えるたび、心のどこかが凍っていくようだった。
風が吹いた。
どこからか、かすかな声が聞こえる。
「悲しむな。お前は、まだ“選ばれている”。」
ルナは振り向く。
そこに立っていたのは、闇のような微笑を浮かべるノクティスだった。
「……またあなた……何のつもり?」
「ただ見ているだけさ。
お前たち“光の少女”が、どんな結末を迎えるのかを。」
「光の……少女?」
ノクティスは屋上の縁に立ち、夜空を見上げた。
「この世界は、光と闇でできていると思っているだろう?
だが、それは違う。
本当は——“どちらも同じ根から生まれた”んだ。」
ルナは息を呑む。
ノクティスの瞳が、まるでルナの奥底を覗くように輝いていた。
「……何が言いたいの?」
「お前の中にも、闇はある。
それを拒めば拒むほど、飲み込まれるだけだ。」
ノクティスの指が宙をなぞると、
ルナの足元に黒い影が広がる。
そこには“もう一人のルナ”が映っていた。
顔は穏やかで——けれど瞳は真っ黒だった。
「これは……!」
「恐れるな。受け入れろ。
お前が本当に望む“光”は、まだその先にある。」
ノクティスの声が、風に溶けて消える。
影も同じように、月光に吸い込まれていった。
ルナはしばらく立ち尽くした。
手の中のストーンがかすかに震えている。
「わたしの中の……闇……?」
その時、遠くから声が聞こえた。
「ルナ——!」
振り向くと、ひかりが駆け寄ってきた。
泥だらけの姿で、それでも笑っている。
「探したんだよ! 一人で行かないでって言ったのに!」
ルナは力なく笑った。
「……ごめん。少し、考えたくて。」
ひかりがそっとルナの手を握る。
「大丈夫。闇があるなら、光もあるよ。
私たちは、それを見つけるためにここにいるんでしょ?」
ルナはうつむき、そして初めて少しだけ笑った。
「……うん。ありがとう、ひかり。」
月の光が二人を包む。
けれど、その月の裏側で、何かが静かに目を覚まそうとしていた——。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。