第37話

誰?
2
2025/11/04 08:21 更新
――夜。
薄明かりだけが灯る部屋の中、ルナは静かに目を覚ました。
誰かの囁き声が、遠くから聞こえた気がしたのだ。

「……ひかり?」

ベッドの方を見ると、ひかりが窓際に立っていた。
月の光が彼女の髪を照らし、淡く銀色に輝かせている。
だけど、その姿はどこか……冷たかった。

「ルナ、起きてたの?」
声は確かにひかりのもの。けれど、響きが違う。
言葉の抑揚が、まるで感情を持たない機械のようだった。

ルナは思わず身を起こす。
「どうしたの? 眠れないの?」

「……眠る必要、ないよ」
ひかりがゆっくりと振り返った。
その瞳の奥で、金色と黒色の光がゆらめく。

ルナの心臓が跳ねた。
「ひかり……その目、どうしたの……?」

ひかりは小さく笑う。
「ねえ、ルナ。わたしたちって、どうして戦ってるんだろうね」

「……それは、魔影を止めるために——」

「違うよ。
止めてるんじゃない。わたしたちが“増やしてる”んだ。」

その瞬間、空気が凍った。
ルナの背筋を、冷たいものが這い上がる。

「なに、言ってるの……?」
声が震える。

ひかりは歩み寄り、ルナの頬に手を触れた。
その手は優しいはずなのに、氷のように冷たかった。

「ルナ、ずっとそばにいてくれたよね。
でも……あなた、誰?」

「……え?」

「わたしの中の“もうひとり”が言ってるの。
この世界は偽りで、わたしの“光”は奪われてるって。」

「もうひとり……?」

ひかりの胸のストーンが輝いた。
光と影が混じり合い、まるで心臓が脈打つたびに世界がひずむようだった。

ルナは立ち上がり、必死に腕を掴む。
「やめて、ひかり! あなたは、あなたよ!
神だとか光とか、そんなの関係ない! 私は——」

「“ルナ”……」
ひかりがルナの名を呼んだ瞬間、声が二重に重なった。

ひかりと、別の誰かの声が。
その低い声が、確かにルナの名を囁く。

「やっと見つけた、月の器。」

「……やめて!!」
ルナは光弾を放つ。
だが、ひかりは動かず、ただ手を差し出すだけでその光を霧散させた。

「ルナ、あなたはもう知らなくていい。」
そう言って、ひかりは微笑んだ。
その微笑みは、ひかりではなく──**“神の少女”**のものだった。



部屋の外から、ステラの気配がした。
扉越しに彼女はただ呟く。

「始まってしまったのね……“第二の覚醒”が。」



月光が消える。
ひかりの姿が影と共にゆらめき、闇の中へ溶けていった。
ルナはその場に崩れ落ち、かすれた声で呼びかける。

「……ひかり……あなた、誰……?」

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