――夜。
薄明かりだけが灯る部屋の中、ルナは静かに目を覚ました。
誰かの囁き声が、遠くから聞こえた気がしたのだ。
「……ひかり?」
ベッドの方を見ると、ひかりが窓際に立っていた。
月の光が彼女の髪を照らし、淡く銀色に輝かせている。
だけど、その姿はどこか……冷たかった。
「ルナ、起きてたの?」
声は確かにひかりのもの。けれど、響きが違う。
言葉の抑揚が、まるで感情を持たない機械のようだった。
ルナは思わず身を起こす。
「どうしたの? 眠れないの?」
「……眠る必要、ないよ」
ひかりがゆっくりと振り返った。
その瞳の奥で、金色と黒色の光がゆらめく。
ルナの心臓が跳ねた。
「ひかり……その目、どうしたの……?」
ひかりは小さく笑う。
「ねえ、ルナ。わたしたちって、どうして戦ってるんだろうね」
「……それは、魔影を止めるために——」
「違うよ。
止めてるんじゃない。わたしたちが“増やしてる”んだ。」
その瞬間、空気が凍った。
ルナの背筋を、冷たいものが這い上がる。
「なに、言ってるの……?」
声が震える。
ひかりは歩み寄り、ルナの頬に手を触れた。
その手は優しいはずなのに、氷のように冷たかった。
「ルナ、ずっとそばにいてくれたよね。
でも……あなた、誰?」
「……え?」
「わたしの中の“もうひとり”が言ってるの。
この世界は偽りで、わたしの“光”は奪われてるって。」
「もうひとり……?」
ひかりの胸のストーンが輝いた。
光と影が混じり合い、まるで心臓が脈打つたびに世界がひずむようだった。
ルナは立ち上がり、必死に腕を掴む。
「やめて、ひかり! あなたは、あなたよ!
神だとか光とか、そんなの関係ない! 私は——」
「“ルナ”……」
ひかりがルナの名を呼んだ瞬間、声が二重に重なった。
ひかりと、別の誰かの声が。
その低い声が、確かにルナの名を囁く。
「やっと見つけた、月の器。」
「……やめて!!」
ルナは光弾を放つ。
だが、ひかりは動かず、ただ手を差し出すだけでその光を霧散させた。
「ルナ、あなたはもう知らなくていい。」
そう言って、ひかりは微笑んだ。
その微笑みは、ひかりではなく──**“神の少女”**のものだった。
⸻
部屋の外から、ステラの気配がした。
扉越しに彼女はただ呟く。
「始まってしまったのね……“第二の覚醒”が。」
⸻
月光が消える。
ひかりの姿が影と共にゆらめき、闇の中へ溶けていった。
ルナはその場に崩れ落ち、かすれた声で呼びかける。
「……ひかり……あなた、誰……?」












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。