第38話

神の少女
3
2025/11/04 08:21 更新
第36話 『黒き祈りの記憶』

「ひかりが……いない!」

朝焼けの光の中、ルナは荒れた森を駆け抜けた。
あの夜の“あなた誰?”の言葉が、頭から離れない。
胸の奥で、ルナのストーンが痛みを訴えるように震えていた。

森の奥。
霧の中に、ひかりが立っていた。
その足元には、無数のモノクロムたちが静かに跪いている。
まるで、女神に祈りを捧げる信者のように。

「ひかり……!?」
ルナが駆け寄ると、ひかりは振り向いた。
その表情は穏やかで、しかし瞳の中には光も影もなかった。

「ルナ。知ってた?」

「なにを……?」

ひかりは、空を見上げて呟く。
「わたしたちが、ずっと戦ってきた“モノクロム”……
 あれはね、かつての魔法少女たちなんだって。」

ルナの足が止まる。
「そんな、嘘……! どうしてそんなこと——」

「ノクティスが言ってた。
 “ステラが祈りを形に変えた結果、彼女たちは影になった”って。」

ひかりの声が震えていた。
その指先が、跪くモノクロムの頬に触れる。
一瞬、その身体が微かに光を帯び、少女の輪郭が浮かび上がる。
――泣いている。かつての、誰かが。

「この子……笑ってるみたいだったのに。
 もう、声が出せないの。」

ルナの喉が詰まる。
言葉が出ない。

「だからね、ルナ。
 わたしたちは、“敵”を倒してなんかいなかったの。
 自分たちを殺してきたんだよ。」

静かな風が吹いた。
その瞬間、ノクティスの黒い影が森を覆う。

「気づいたようだな、神の器。」

ノクティスが姿を現す。
その瞳は、まるでステラと同じ光を宿していた。

「貴様……何を企んでいるの!」とルナが叫ぶ。

「企み? 違う。
 俺は“彼女”の残した欠片。
 ステラの闇が望んだ救済だ。」

「救済……だって!?」

ノクティスの背後で、モノクロムたちがゆっくりと立ち上がる。
彼らの瞳に、かつての魔法少女たちの光がちらつく。

「ステラが光を求めた瞬間、闇が生まれた。
 それが俺だ。
 そして“彼女たち”は、その闇に魅せられた者たち。
 つまり——」

「お前たちが戦ってきた敵は、ステラの祈りの形そのものだ。」

ルナの視界が揺れる。
世界がひっくり返ったような感覚。

ひかりが一歩、前へ出た。
「ノクティス……ステラは、あなたを生みたかったわけじゃない。」

ノクティスは微笑む。
「そうだろうな。だが、彼女は“完全な光”を望んだ。
 だから俺という“完全な闇”もまた、生まれた。
 それが世界の均衡だ。」

ひかりの胸のストーンが強く輝いた。
ルナが叫ぶ。
「ひかり! だめ、それ以上は!」

しかし光は止まらない。
その瞬間、空が割れ、
ひかりの中からもうひとりの声が響いた。

『光が闇を拒んだ時、世界は終わる。
だから、わたしはもうひかりじゃない。』



ひかりの姿が淡い光に包まれ、形を失っていく。
ルナはその手を掴もうとするが、指先がすり抜ける。

「ひかり……戻って……!」

「ルナ、見てて。
 この世界の“祈り”が、何を生んだのか。」

空一面に光の粒が広がり、
その中でルナは、かつての魔法少女たちの声を聞いた。

『ルナちゃん……わたしたち、まだここにいるよ。』

涙が止まらなかった

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