英智から預かった『神桜 瑠衣』という名前が、ずっと離れない
私はあの日から、リズリンの練習室やガーデンテラスを歩き回り
彼を探し続けていた
中庭の大きな木の下
木漏れ日を浴びて、彼はてもとで手際よくタロットをシャッフルしていた
勇気を出して名前を呼んだ瞬間、彼の指先がピタリと止まる
彼は顔を上げることなく、冷たい静かな声で私を拒絶した
プロデューサーとして話がしたい、君を輝かせたい
用意していた言葉を投げかけようとしたけれど
彼は立ち上がり、一度も私と目を合わせないまま歩き出す
声をかける隙すら与えず、彼は幽霊のようにふらりと姿を消した
あとに残されたのは、彼が座っていたベンチの冷たさと
微かに漂うバニラの甘い匂いだけ
立ち尽くす私の背後に、長い影が落ちた














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!