第2話

ペルソナ
11
2026/01/05 14:03 更新
拾い上げたタロットカードは、不思議な熱を持っている気がした


描かれた『運命の輪』を指先でなぞりながら、私は最上階へと向かう


この場所へ来るように指示を出したのは



スターメーカープロダクションスタプロの所長――天祥院英智だ






扉を開けると、窓際のソファに座る彼が、穏やかな


けれどすべてを見透かすような微笑を浮かべていた




天祥院 英智
天祥院 英智
やぁ、お疲れ様
⋯おや、顔色が少し優れないね
天祥院 英智
天祥院 英智
何か、招かれざる『幽霊』にでも会ったのかい?




私は無言で、先ほど拾ったばかりのカードをテーブルを置いた


英智はそれを見た瞬間、一瞬だけ目を細め、懐かしむように


あるいは慈しむように細い指でカードを引き寄せた







天祥院 英智
天祥院 英智
⋯⋯『運命の輪』か。
彼は相変わらず、皮肉なカードを選ぶね
天祥院 英智
天祥院 英智
それとも、君がそれを引き寄せたのかな?
(なまえ)
あなた
彼⋯『ペルソナ』とは、何者なんですか?
天祥院 英智
天祥院 英智
彼はね、神桜 瑠衣かみざくら るいという。
⋯⋯もっとも、今その名で彼を呼ぶ人間は、僕と、あとはせいぜい朔間零ぐらいだろうけれど。




天祥院 英智
天祥院 英智
かつて夢ノ咲学院で革命が起きた時、彼は僕のとなりにいた
⋯いや、正確には『どちらの隣にもいなかった』と言うべきかな。
天祥院 英智
天祥院 英智
彼は僕からも、そして朔間くんからも差し伸べられた手を取らず、ただ独りで
天祥院 英智
天祥院 英智
その輪の外に立ち続けることを選んだんだ






(なまえ)
あなた
⋯⋯⋯っ


天祥院 英智
天祥院 英智
⋯どちらかを選べば、もう片方を傷つける
天祥院 英智
天祥院 英智
⋯⋯誰からも愛されなかった彼は、皮肉にも誰よりも優しすぎた。
だから彼は、自分自身を消してしまったんだ。
天祥院 英智
天祥院 英智
名前も、感情も、過去も、すべて。
そうして生まれたのが、君の見た空っぽの仮面ペルソナだよ






英智はカードを私の方へ押し戻した


その瞳には、アイドルとしての冷徹さと、幼馴染としての


執着が混じり合っている





天祥院 英智
天祥院 英智
君に、この『止まった時計タロットカード』を預けたい
彼をプロデュースし、その仮面の裏にある本名をもう一度呼び起こしてあげてほしいんだ。
天祥院 英智
天祥院 英智
⋯⋯たとえそれが、残酷な再会になったとしてもね

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