私は、昔から異能力を疲れる人間としても、
位の高い人間だった。
私の世界は"異能力を持ち合わせていない"人間が4割を占めていた。
所謂、無能力者。
無能力者は国によって扱いが違う。私の住む国では、死刑にしている。仕事は任せられないからと言って放置すれば、勝手に死体になってしまうし。
保護すると言っても、そんなの国の恥になってしまう。
そんな死刑を担当するのが、この私だ。
学生の身分ながら、死刑執行の仕事を任されている。
私の異能力は、なんでも「切断」「分身」「転移」することが出来る。だから、人を殺す能力としては優秀な方なのだ。
死刑執行は、無理やり私がやる羽目だ。
正直人が死ぬ姿も、苦しむ姿も見たくない。
この世は"位"で世の中が決まるのだ。一何時でも。
とある国では、"平等"だの言うが、そんなの建前に過ぎない。
死刑囚のいる場まで向かう。この瞬間は、いつ来ても慣れないものだ。
1人目の死刑囚は、まだ幼い、6歳くらいの少年だった。
私の「切断」という能力は、相手を視界に捉えなければ発動できない。
少年の姿を見てみれば、白い服に痩せ細った身体。服の生地が薄いからか、痣が少し見える。
きっと、路地裏で小さく暮らしていたのだろう。だが、警察にみつかり、このザマ。
なんて、可哀想な子だろうか
……なんとも、胸が痛む。善意が傷つかれるこの感覚。
私は、何度も無能力者を殺めてきた。それもこの子以上に小さな子供を、多く
それもそうだろう。殺す時に逃げられないよう、睡眠ガスをこの部屋に撒いているからな
もう、こんな日々は懲り懲りだ。だから、この子と一緒にあの世に逝く事にした。
ああ、"異能力なんてなければ"
私も、この子も幸せだったのにな
準備をするか……
少年を死刑場に運ぶ
普通は、そうだ。私は警察からすれば道具でしかない。死ぬ事すら、自分で選べないのか。
無能力者だからといって、彼達も皆我々と同じ人間。生きる権利はあるはずなんだ。
だから、もうこんな事は……続けたくない
ズキ、と胸がナイフで刺されたような感覚になる。
その言葉を聞いた瞬間、プツン、と何かが切れるような音がした。
そうか、私は
悪者、無能力者をなんの慈悲もなくぶっ殺してきた
殺人鬼
首を吊るす事ができるボタンを押す.
その時一瞬、「助けて」と聞こえた
ああ、本当にすまない。
"無能力者の死刑を全て取り消すことが出来たら"
そんなの、都合が良すぎるか
仕事を終え、家に戻りベットに入る
ごめんなさい、
そう思い、目をつぶった。このまま安楽死出来れば、幸せだったのかもしれない。
____________
そして、眠った瞬間
私は、今いる世界線に辿り着いていた。
NEXT過去編→[ルア・ブラックスワン]
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!