第251話

「2P」VSその9
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2020/11/04 04:37
「2P」VSその9


先へ進んだ3人は城の中へと入る
そこは中央階段がある広い玄関ホール

パチパチパチ(拍手)

ヤヨイ)ようこそ、黒陽の城へ歓迎するよ。

中央階段の前で拍手をしながら出迎えたのは
春の2Pであるヤヨイだった

始)今度は春か...
春)みたいだねぇ。
ヤヨイ)フヅキは見逃したようだけど
ここから先は誰も通さないよ。

パチンと指を鳴らすと
玄関ホールを埋め尽くす大きさの魔法陣が
床に現れ黒いモヤのような壁を生み出した

隼)囲まれたね。
始)抜けられそうに無いな...
春)影属性の壁か...

ヤヨイ)君たちの冒険はここで終わりさ。

隼)僕が...
春)隼、ここは俺に任せてもらってもいいかな?
2人には力を温存してもらわないとね。
隼)分かった、任せるよ。

春)2人とも、俺が合図したら階段へ走って
先に進んで。
始)任せていいんだな?
春)もちろん、春さんにお任せあれ。
始)(頷いて)隼。
隼)いつでもいいよ。

春)3.2.1.行って!

春の合図で始と隼が中央階段へと駆け出す

ヤヨイ)何を...
春)ディスペル!

春がパチンと指を鳴らすと魔法陣が掻き消され
行手を遮っていた影の壁を消した
それと同時に2人は階段を駆け上っていく

ヤヨイ)行かせないよ!

ヤヨイが魔法を発動しようとするが..

春)マジックキャンセル。

パチンと音がすると
ヤヨイの魔法が発動する事なく消える

ヤヨイ)邪魔を...(春を睨む)
春)君には俺の相手をしてもらうよ。

この間に始と隼の姿は見えなくなっていた

ヤヨイ)1人で残ったことを後悔させてあげるよ。
春)お手柔らかに。

ヤヨイ)ファイヤーボール。
春)ウォーターボール。

2人同時に魔法を発動する
それはぶつかり合い水蒸気となって視界を奪う

ヤヨイ)発動前に反対属性の魔法を使うなんてね。
春)発動前でも術式でどんな魔法かは分かるからね。

視界が開けた瞬間に春が魔法を放つ

春)ストーンバレット。
ヤヨイ)エアバレット。

魔法で作られた岩の弾丸が風の弾丸によって
砕かれ、その破片が吹乱れ春の頬を傷つける

春)おっと。(頬の血を拭う)
ヤヨイ)君に出来る事は俺だって出来るんだよ。
春)そうだね、君は俺だった。

そう言う春は変わらず余裕がある素振りを見せて
ヤヨイの苛立ちをつのらせる

ヤヨイ)ひとつの魔法は相殺できても、
複数の魔法を同時に打ち消すのは無理だろ!

ヤヨイの足元の大地が凍り、空気が燃え上がる

春)他属性の同時詠唱か...
ヤヨイ)考える時間は与えない!

ヤヨイが放つ氷と炎の魔法が春を襲う

春)うん、考えないよ。

春が手をかざすと目の前に光の壁が現れる

ヤヨイ)!?
春)返すよ、魔法。

光の壁が魔法を弾き返す

ヤヨイ)..っ!

パチンと魔法を解除するが衝撃の余波が視界を奪う

春)(どうでるか...)
ヤヨイ)...

少しずつ視野が戻る中、淡い光が辺りを照らす
ヤヨイに魔力が集まるのを感じた

春)あれは...高位魔法か。
ヤヨイ)切り裂け!テンペスト!

逆巻く暴風が吹き荒れる

春)っ!

周囲の壁が風で切り裂かれる
春も腕や肩、足に傷を負う

ヤヨイ)どう?抵抗できるものならしてみなよ。
春)...魔法使いは冷静であれ。
ヤヨイ)?
春)俺の教訓だけどね、連発して高位魔法を
使うのはいいけどその弱点は分かってる?
ヤヨイ)弱点だと?
春)魔法の威力が高いほど硬直時間が長いって事だよ!

魔法使いにおける弱点、
魔法使用時において一時的に動けなくなる
それは魔法の難易度が高いほど長く

春)俺のオススメは威力の低い魔法の連発だよ。
ファイヤーボール!!

春の周囲に無数の火球が現れ、ヤヨイへと放たれる

ヤヨイ)ッ!(動けない!?)

硬直時間が解けていないヤヨイは
防御する事も出来ずに受けるしかなく

ヤヨイ)ぐっ、ぁああ!!
春)俺の勝ちだよ、魔法使いの戦いは消耗戦
前衛がいないなら尚更、冷静でいないとね。
ヤヨイ)...ぅぅ、負けたよ。
でも、これで終わりじゃない...あの2人は..

最後まで言う事なく気を失うヤヨイ
それを見届けて天を仰ぐ

春)知ってるよ、あの2人は俺たちとは別格だからね。
その「2P」だって普通なわけがない。


先へ向かった2人を心配しながら自身も先へと進む


「2P」VSその10へ続く

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