第7話

月光
341
2026/03/03 06:17 更新





深夜。

自宅マンションの最上階。

静まり返ったリビング。




私は昼間受け取ったカードをテーブルに置く。



「今夜、ご自宅へお伺いします。」




ふう、と小さく息をつく。





あなた
……本当に来るんですか?


カーテンの向こうに月が見える。


すると、

カチリ。

窓の鍵が、静かに外れる音がした。




振り向くと、白い影が月を背に立っている。



怪盗キッド
待っていてくれたのですね
あなた
不法侵入は減点ですよ


キッドは優雅に室内へ降り立つ。

手袋を外す仕草。


怪盗キッド
こんな時間まで起きているということは、
私を待っていてくれたのでしょう?
あなた
……...

怪盗キッド
それに、今は盗みに来たのではありません


白い布に包まれた物をそっと取り出し、


私にゆっくりと近づく。




あなた
...何でしょう



何かを握る手が少しだけ首元に触れたかと思うと、


すぐに手を離し、握っていた手のひらをぱっと開く。




そこには、“月光の雫”。


私の首に元通りかけられていた。




あなた
……返すんですか?
怪盗キッド
貴女の首元以外では、
美しく見えませんでしたので


私はゆっくり宝石を持ち上げる。



あなた
世間的には大事件なんですよ...
怪盗キッド
えぇ
あなた
なのに返す?


キッドは少しだけ真面目な顔に戻る。



怪盗キッド
貴女を巻き込みすぎました


夜風がカーテンを揺らす。


私は彼を見る。


あなた
...私を利用するつもりでは?
怪盗キッド
深読みしすぎですよ
怪盗キッド
そのつもりなら、返していません


キッドが言っていることは間違いない。



私はサファイアを胸元に当てる。


月光が反射する。




すると、キッドの視線が止まる。



怪盗キッド
やはり似合いますね
あなた
宝石に、ですか?
怪盗キッド
両方です
あなた
あら、ありがとう


私はキッドに背中を向け、キッチンへ向かう。




あなた
お茶でもどうかしら
怪盗キッド
今夜は怪盗として来たので、大丈夫ですよ


そう言ってキッドは窓枠に足をかける。



怪盗キッド
では、次は1人の男として
あなた
.....相変わらず営業妨害ですね
怪盗キッド
仕事に支障をきたしていますか?
あなた
……
怪盗キッド
では、またお邪魔しますね


ふっと笑い、窓から外へ飛ぶ。


あっという間に月光の中へ消えてしまった。



部屋に残るのは、静けさとサファイアだけ。



私は窓辺に立つ。





あなた
……ずるい人



頬が少しだけ、緩む。







遠くのビル屋上。

キッドは夜景を見下ろす。



怪盗キッド
...ったく……




緩んだ口元を手で抑えて、月を見る。





怪盗キッド
……ずるすぎるだろ...






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