第40話

言葉の意図は
321
2023/10/05 09:00
[みぞれさん、おはよ]

[寝坊したから先行っててくれる?]

[ごめんね]





















普段より少しだけ空いている電車。

メテヲはドアに寄りかかって窓の外を見ていた。
メテヲ
(遅刻確定だなー)
今朝はいつもより1時間半も遅く起きた。
メテヲにとって、寝坊するのは珍しいことだった。

平日は遅い時間に寝て、朝は余裕を持って起きる。

それゆえ平均睡眠時間は4時間程度だが、今日は7時間も寝てしまった。
メテヲ
(せっかく早く寝れたのにね…)
まあ…原因は分かっている。

昨夜、スマホのアラームをセットしないで寝たから。
メテヲ
(まあでも、これでいいや)
メテヲ
(みぞれさんとどんな顔して話せばいいか分かんないし)
別に喧嘩をしたわけではない。

ただ、すれ違ってしまっただけだけど。
メテヲ
……
もしかしたら、自然と身体がめんどくさいことから逃げていたのかもしれない。
メテヲ
……ほんと、最低だな…
学校の最寄り駅に着いて、電車を降りる。

普段は同じ制服の生徒で混雑しているが、この時間…始業時刻まであと3分となると、その姿はない。


ゆっくり階段を下っていると、男子生徒に抜かされた。彼はそのまま一番飛ばしで階段を駆け下りる。
メテヲ
(もう無理だよ、諦めなよ)
メテヲ
(寝坊したものはしょうがないんだから…)

メテヲ
……っ
もう無理、しょうがない…

昨日の自身の言葉と重なり、一瞬息が詰まる。
メテヲ
しょうがない…しょうがない……
自分に言い聞かせるように呟く。

もうしょうがないんだ
















メテヲ
…え?
改札を出た時、目の前の光景にメテヲは目を疑った。
メテヲ
なんで…みぞれさん
いつもの待ち合わせの場所にみぞれが立っていた。

顔を上げてメテヲに気付くと控えめに左手を振る。
メテヲ
……
困惑して足を止めていると、みぞれは小走りでこちらに駆け寄ってきた。
みぞれ
メテヲさん、おはようございます
メテヲ
…お、おはよ
みぞれ
大丈夫ですか?体調悪かったり…?
メテヲ
いや、平気だけど…
みぞれ
そうですか、じゃあ行きましょ
メテヲ
………
まるで昨日のことがなかったかのように、彼女はいつも通りだった。
みぞれ
今日は暖かいですね
メテヲ
うん…
メテヲ
……
みぞれ
どうかしました?
メテヲ
みぞれさん…
メテヲ
ずっと待ってたの?
みぞれ
はい!
メテヲ
なんで
みぞれ
…メテヲさんとお話したくて
メテヲ
なんでわざわざ…
メテヲ
遅刻になっちゃうし
みぞれ
いいですよ、それくらい
メテヲ
それくらいって…みぞれさん絶対今まで遅刻0だったでしょ!?
メテヲ
なんでメテヲなんかに…
みぞれ
メテヲさんだからですよ
メテヲ
え?
みぞれ
メテヲさんとだったら、別に遅刻でもなんでもいいです
メテヲ
……何、それ
みぞれ
どうせ間に合いませんしゆっくり行きましょう
メテヲ
…うん



















みぞれ
昨日、言いたかったんですが
みぞれ
焦らなくたって、私はメテヲさんの隣にいますからね
メテヲ
……え?
みぞれ
今までも一緒に悩んで、乗り越えて来たじゃないですか
みぞれ
私達は大切な部活仲間で、友達ですよね…?
メテヲ
……
みぞれ
だから













みぞれ
だから…嘘はやめてほしいな……
メテヲ
っ!!
メテヲは目を逸らし、歩くペースを早めた。

そしてすぐにみぞれが後を追う。
メテヲ
…嘘なんかじゃない
みぞれ
……
みぞれ
疲れちゃいますよ、そんな急いだら
メテヲ
…もう疲れてるよ
みぞれ
そんなの……
みぞれ
………
メテヲ
きっと、みぞれさんとメテヲは同じ気持ちだよ
みぞれ
そう…でしょうか
メテヲ
だって、この方が楽でしょ
メテヲ
もう縛られなくていいんだから…さ
みぞれ
それは
メテヲ
ね、おんなじこと考えてるでしょ?
みぞれ
……
メテヲ
……
みぞれ
……ああ
みぞれ
メテヲさんが言うなら、そうなのかな?
メテヲ
ん……
みぞれ
……





















メテヲ
ねえ…みぞれさん
みぞれ
はい
メテヲ
メテヲは…部長は間違ってたのかな
みぞれ
……
メテヲ
…2年前から
みぞれ
どうでしょうね
メテヲ
ウパさんに言われてちょっと考えてた
みぞれ
………
みぞれ
…先輩も悩んでましたよ
メテヲ
そうなの?
みぞれ
ただ、去年と今では状況が全然違うから
みぞれ
簡単には比べられない
メテヲ
……
みぞれ
みんな疑心暗鬼になってたんですよ
メテヲ
……そうだよね
みぞれ
もっと気軽に考えてもよかったのかも
みぞれ
もちろん、気持ちは分かりますが
メテヲ
……
メテヲ
それはメテヲに言ってるの?
みぞれ
…部長に言ってます
メテヲ
……そっか

プリ小説オーディオドラマ