「全然大丈夫そうじゃない」
その言葉が、
妙に頭から離れなかった。
談話室の空気は、
またゆるく動き始めていた。
ぷりっつが紙コップを投げる。
あっきぃが笑いながら避けた。
そのやり取りを見て、
少しだけ、びっくりした。
普通だと思った。
ここ、
病院なのに。
もっと静かで、
暗くて、
みんなタヒにそうな顔してる場所だと思ってた。
でも違う。
ちゃんと笑ってる。
隣を軽く叩かれる。
あっとだった。
おそるおそる座ると、
向かい側のけちゃがじーっと見てくる。
まぜ太が呆れたように言う。
けれどけちゃは困ったように笑った。
その瞬間。
ピシピシピシッッ
鎖骨に、
細いひびが走る。
全員の視線が止まった。
しまった…、!
感情が動くと駄目なのに。
なにも感じちゃいけないのに
慌てて服の襟を押さえる。
声が震える。
怖かった。
綺麗って言われるのも。
心配されるのも。
透けていく身体を見られるのも。
全部全部、嫌だった。
視線は合わせないまま、ぷりっつがぼそっと言った。
紙コップを指先で弄びながら続ける。
静かな言葉だった。
慰めようとしてる感じじゃない。
ただ、
事実を置いてくれるみたいな言い方。
優しく感じた。
談話室に笑い声が広がる。
ふわ、
指先から、
淡い星屑が舞った。
さっきまでと違う。
苦しさじゃない。
少しだけ、
温かい感情。
それでも。
パキッと
今度は右手の小指が、
ほんの少し砕けた。
透けていた小指の先端が、
硝子みたいに崩れる。
落ちた破片は、
床につく前に星屑になって消えた。
顔から血の気が引く。
戻らない。
一度星屑化した部分は、
二度と元には戻らない。
つまり。
また、
身体が減った。
ちぐさくんが即座に言った。
真顔で言ってる。
そのせいで、
また少し空気が緩む。
呆然と瞬きをするしかなかった。
変な人たち。
でも、
嫌じゃない。
その時。
病棟の廊下に、
遠くアラーム音が響いた。
談話室の空気が変わる。
あっきぃの笑顔が止まり、
まぜ太がゆっくり立ち上がる。
誰かが小さく呟いた。
直後。
ガタン!!
どこかで、
何かが倒れる大きな音がした。
もうこれしばらく更新されないと思っといてください頑張りました。制限5分で。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。