談話室は、
消灯後とは思えないくらい明るかった。
自販機の白い光。
誰かが置きっぱなしにしたカードゲーム。
ソファに雑に積まれた毛布。
病院特有の消毒液の匂いに混ざって、
カップ麺の香りまでしている。
一斉に視線が集まって。
思わず肩を揺らしてしまう。
すると隣のぷりっつが、
小さくため息をつく。
ソファの背もたれから顔を出した金髪の少年が
にっと笑った。
その勢いのまま立ち上がろうとして。
ごほ、
突然、
強い咳をする。
瞬間。
口元の隙間から、
淡い橙色の光が漏れた。
肺が、
光ってる。
夢主が目を見開くと。
あっきぃは慣れた様子で笑った。
でもその笑顔の奥に、
ほんの少し苦しそうな影が見える。
今度は窓際。
イヤホンを片耳だけ外した少年が、
本から視線を上げる。
短く名乗る声は静かだった。
その言葉に、
談話室の空気が少し止まる。
みんな、
夢主の指先を見る。
透けた指先。
硝子みたいな皮膚。
光るひび。
隠そうとして握りしめた瞬間。
ぱき。
小さな破片が、
床に落ちた。
顔が青ざめていくのがわかる。
急いでしゃがみ込もうとした時。
柔らかい声がした。
水色の髪の少年――は確か…ちぐさくん?が、
先に床へ膝をつく。
そっと、
星屑化した破片を拾い上げて。
小さく呟いた。
その破片は、
彼の指先の中でさらさら崩れて、
淡い星屑になる。
夢主の喉が詰まる。
みんな、
気味悪がらないんだ。
怖がらないんだ。
その事実が逆に苦しくて。
気づけば、
そんな言葉が漏れていた。
癖になっちゃったみたい…
すると。
低い声。
ソファの端に座っていたまぜ太が、
不思議そうに眉を寄せる。
ぶっきらぼうな言い方。
でも責める響きは全然なかった。
こんなこと言われたことがないから、
返事ができない。なんて返せばいいのかわからない。
代わりに。
ぱら、
また星屑が零れる。
感情が揺れると止まらない。
その様子を見て、
けちゃがふわりと笑った。
静かな声だった。
綺麗だね、
とは言わなかった。
そのことに、
少しだけ救われる。
ぷりっつに聞かれ、
私は小さく口を開く。
その瞬間。
ピシッ
今度は首筋に細いひびが走った。
談話室が静まり返る。
夢主自身も、
息を止めた。
最近、
ひびの広がる速度が早い。
怖い。
怖いのに。
反射みたいに笑ってしまう。
こんな自分なんて大嫌い。
ぷりっつが、
少し怒ったみたいな声で言った。
その声に。
胸の奥が、
ほんの少しだけ熱くなる。
生きてて、初めて
“大丈夫じゃない”って、
見抜かれた気がした。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。