第3話

再会……そして。
21
2018/04/17 11:08
その日から、慌ただしい日常が始まった。心が戸惑う前に何年ぶりかの再会。担当医に喧嘩腰で詰め寄る肉親は何度も問いただしていた。医師は動揺など見せず同じ言葉を繰り返す。もう末期も末期。手の施しようがない。手術をしたら、死期をはやめるだけだと告げた。気休めに、痛みを楽にする薬を処方するくらいしかできない。治すための治療ではなく、残った時間を少しでも穏やかに過ごさせてあげることしか、私達にはできない。変わっていく、みんなの日常。彼女を心安らかに過ごさせてあげるため、最前を尽くそうと無言の契約が結ばれた。
ベッドの空きを待つ患者ばかりだったので、残り時間のない患者など入院させておけない。5日ほどして、その病院をあとにした。文字通り、追い出されるように。それから2週間の自宅療養の日々が始まった。
毎日、痛みに悶える姿を見るのは辛く、無力さを思い知らされるばかりだったけれど、
幸せだった。神経をぴりぴりさせる姿に、動揺する。それほどまでに、辛くなるまでどうして、何も言ってくれなかったの?
耐えて耐えて、もう取り返しがつかなくなるまで我を張った、最愛の母親。食事とトイレ以外は常にぐったりと布団の中にいた。2階で寝させるのは、階段があるので危ないということで同じ部屋で寝たけれど、眠れるはずがなかった。トイレに起きるその度に、気が気ではなかった。心配でついていくと、母の神経を逆撫でた。私の神経も心もぼろぼろだった。それでも、そばにいてできることをした。あまり食べられない母に合わせて食事の量を減らしたり。今まで何もできなかった分、せめてという思いが強かったのかもしれない。家族で食事にもいった。苦しげに椅子に身体を寄りかからせて、母は食べていた。本当に僅かな量しか食べられなかったけど家族みんなで来られたことが嬉しかったのだろう。支えがないと歩けないほど弱っている彼女は、連れてきてもらったという気持ちに精一杯答えたのだ。

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